第11話

 2階へ行こうと廊下に出るとちょうど父が帰ってきた。

「お父さん、おかえり」

「ただいま、ご飯は食べ終わったの?」

「うん、さっき。今からお風呂行く」

 と言って部屋に行った。

 部屋に行き、着替えを取り、洗面所へ。父も空気を読んでいるだろう。洗面所には私がお風呂から上がるまで父は入ってこないはずだ。まぁ、入ってきても困るから入ってこないでほしい。

 服を脱ぎながら、母とのやり取りを思い出す。オープンキャンパスに行くと母に伝えたがあまり良くない反応を示したため、計画の練り直しをしないといけない。母の態度を見ると父親も同じようなことになりそうだ。

 かけ湯をし、体を洗い、湯船に浸かる。

「あーーどうするかなー」

 心の声が漏れた。

 やっぱり東京に行くのは難しいのかな。次に言うなら旅費は私が全部払うから行かせてくれと言ってみるか。まぁ、東京への受験を許されていないからオープンキャンパスに行くならまずは受験を許してもらわないといけないのかもしれない。でも、そもそも東京の大学に受験する気はないしなぁ。

 東京でタピオカを飲みたいから東京に行かせてくれと正直に母には言えない。うーん、もっともらしい言い訳は他にないかな。大学を見比べたいと言ってもダメだったしなー。母の大学の基準は賢いか賢くないかで大学を見ていて基本的にはどこ行っても一緒だと思っているのではないかと私は感じている。まずは、そこから崩さないとだめだなー。

「お風呂まだ出てこないの」

 と母が洗面所で私に呼びかけた。

「うわぁ、えっ。あー、もうすぐ出るよ」

 と返事をした。びっくりした。時計を見ると気づいたら40分も経っていた。

 急いで頭、顔、身体を洗いお風呂から出る。髪の毛は自分の部屋で乾かそう。ドライヤーを持って洗面所から出て、出たよと母に伝えてから自分の部屋に行った。

 部屋の電気をつけ、ドライヤーとコンセントを繋ぎ、無心で髪を乾かす。乾いたと思ってもなんだか湿ってる感じがする。そんなことを繰り返していたら、時間がかかってしまった。今は母がお風呂に入っているはず。ドライヤーを戻すために洗面所に行くと案の定母はお風呂に入っていた。

 再び部屋に戻るために飲み物を取りにリビングへ。

 リビングへ行くと父がソファに座っていた。話すこともないし、話しかけないように距離を置いて冷蔵庫の方に行く。

「まき、東京の大学に行きたいだって?」

 冷蔵庫を開けようとしてる時に話しかけられた。もう、母は父に言ったみたいで少し呆れたが表情には出さないように

「うーーん、まぁ。行きたいと言うより見に行きたいとはお母さんに話したよ。なんか、だめみたいだけど」

 と背中越しに返した。

「見に行ってどうするんだ?」

「今志望してる大学と比べたいってのはある。東京の雰囲気とどう違うのかって」

 お茶を自分のマグカップに入れながら話す。

「そうか」

 何か父が言いそうな雰囲気があったが、気にせず2階へ上がった。

 自分の部屋に戻り、机に向かう。学校の宿題とやっておいた方がいい教科の予習だけをし、その後はだらだらとスマホを見て過ごし、寝た。

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