第5話

 いつの間にか下校時間になっていた。

 東京に行くための言い訳を考えてしまい、授業に集中できなかった。隙があれば東京へ行くための言い訳を考えては、黒板の字を消される前に急いで書き写すことを繰り返していた。

 来年には受験をしてることが考えられない。東京へタピオカを飲みに行こうとしている私だが、受験する大学が決まっていないわけではない。受験する大学は親や担任の先生に勧められるまま決めたところを受ける予定だ。言葉や態度にはしないが受験に向けて本気で頑張っている人との温度差を薄っすら感じ始めている。

「帰ろーー!!」

 とあんりがやって来た。鞄を持つ。2人とも何の部活も入っていないため全ての授業が終われば帰る。部活で汗もかいていなければ、世にいう青春という青春をしていないためこれがおとなになってから本当に思い出になるのかと不安を感じている。

「まきは今日1日、ずっとぼーとしていたよね」

 とあんりに言われた。

「え、そう?」

 と答えると今日は早く寝なーねと返された。あんりに1日中ぼーっしてることがバレていたが、今日1日では親への東京へ行くためのいい言い訳を考えれなかった。考えるのをやめるべきなんだと思うけれど、今は考えないと先には進めない気がしている。

「今日、推しがテレビに出るからテレビ観たいのに親がうるさくて集中できないのマジでイラつく」

 と、ひっそりと悩んでいる私にあんりが親への愚痴を始めた。

「あ、うん。ほんと、そうよね。最近、私の親もことある事に小言が増えた気がする。たぶん帰ったら寝坊したことまた絶対言ってくるんだよ」

「少しくらい許してくれたっていいのにね」

 受験が見え始めてから進路こと勉強のことを親から言われることも増えたため、私たちの親への愚痴も増える。

 家でイライラするが、親には勝ち目がない。イライラした気持ちや状況、愚痴をあんりやクラスの仲のいい友達に話す。話せることでやっぱり親に対してイライラするのは当たり前だし、人に愚痴っていいんだと安心感が得られることが個人的に助かっている。

 あんりと私の家は途中まで帰り道が同じだ。あんりと別れた後もまた東京のことを考え始めたが、結局いいアイデアなんか浮かばないため、考えることをやめ無心で家へと向かった。

 家に帰ってきた。

 ポストからチラシを取り出す。なんでか分からないけど、高校2年生になってから大学のパンフレットが届くようになった。今日も大学のパンフレットが届いていた。どこからか情報が漏れてるんだろうな。個人情報とは、と思う。

 大学のパンフレットと併せてチラシ、パンフレット、新聞紙を持って家の中に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る