完全な正義
森井スズヤ
第1話
僕等は正義の下に集いし同胞だ。正義は誰かの悪であり、悪は誰かの正義であることなんて重々承知の上で、僕等は正義を振りかざすんだ。
完全な正義は存在しないし、完全な悪も存在しない。人の心の中には必ずしも正義と悪が相反している。それでも僕等は僕等なりの正義をもって生きている。
前置きが長くなってしまったが、諸君、入学おめでとう。この『正義立正義専門学校』への入学は、さぞかし苦労の連続であっただろう。
なんせ、この『正義専門学校』に入学するには、世間一般の思う『正義』と自分なりの『正義』は完全に別物であると理解した上で、自分なりの『正義』について、しっかりとした理論を持って文章を書かなければならないのだからね。
さて、話は変わるが、この『正義専門学校』が設立された理由を、諸君は知っているかい?ちなみに、パンフレットに書いてあった設立の歴史については考えなくてもいい。あれは政府に設立を認めてもらうための真っ赤な嘘だからね。
この学校を設立した本当の理由は、諸君に『悪』について学んでほしいと思ったからだ。
正義を学ぶ学校で悪について学ぶなんて、おかしな話だと思うだろう。だから、正直にそう言ってしまったら、絶対に設立は認められないと思ったんだ。案の定、僕の友人は同じような理由で『悪立悪専門学校』の設立は政府に認められなかったらしい。まあ、悪を学ぶ学校なんて、政府のもつ正義の琴線にしか触れないもんね。
あ、すまない、話が逸れてしまったね。これも僕の悪い癖だ。悪癖も正義である場合もあるが、今この時に至っては悪でしかないね。すまない。
話を戻そう。
悪を学ぶことは、すなわち正義を学ぶことである。これは誰しもに共通する事であり、僕等が僕等なりの、そして一般的な、正義という悪をもつことにも繋がるだろう。
だからこそ、悪を学び、正義について考えることで、僕等の正義を更に強化していってほしい。僕はそう思う。
長くなってしまったが、そろそろ終わろうか。ほら、何名かの生徒がもう、いってしまっている。
さあ、同胞よ、立ち上がれ。
これから、我が『正義立正義専門学校』にて、正義について、悪について学び、ひとりひとりに共通する世間一般的な正義とはかけ離れた自分自身の正義を身に着けろ。
そして、生まれ変わった時に、正義も悪もわからない、区別もつかない馬鹿な若者にならないように、頑張ってほしい。
神様として、そう思う。
完全な正義 森井スズヤ @suzuya__113
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