第2話

[高校時代]


高校三年間が、

私にとって、

母にとって、

そして家族にとって

人生の大きな分岐点となりました。


高校一年生。

私は母に認められたくて、父に喜んでほしくて、

学校の先生に褒めてほしくて、

塾の先生に期待してほしくて、

そんないろいろな期待と願望だけを頼りに、

大人が勧める学校を志望し、入学しました。

母も父も担任も塾講師も、大変喜んでいました。

そんな光景が嬉しくて堪りませんでした。

今まで日の目を浴びることのなかった私に、

こんなにも期待しこんなにもまっすぐな眼差しを向けてくれる。

それだけで幸せでした。

しかしそんな幸せは長くは続かず、

次第に学校と自分とでのズレを感じるようになりました。

いじめられていた中学時代とは違い、

有難いことに友達には恵まれ、なんとか毎日を過ごしていました。


思春期に真っ只中だったため、母との衝突はやはり絶えませんでした。

私が中学二年生のころから、父が単身赴任で国外に出ていました。

父がいないことの不安や、金銭的な不安、

母の中でも様々な思いがあったのだと思います。

私がもし母に少しでも寄り添えていたなら、

結果は違っていたのかもしれません。

しかし、自分の事で精一杯でそれどころではありませんでした。

母との喧嘩は、中学時代よりも日に日にエスカレートしていきました。



ある朝、いつものように学校に行こうとするも、

起き上がることができませんでした。

体がまるで鉛のように重い何かに変わってしまったような感覚でした。

”起きなければ”

そう思えば思うほどに体は沈んでいき、冷や汗をかきました。

当然、母が、学校に行かないなどという選択を許すはずもなく、

こっぴどく怒られました。

それから明くる日も明くる日も、

私は学校に行けませんでした。

そんなある朝、仕事に行く前の母に、

「今日学校に行かんかったらどうなるか分かってるんか」

「覚えとけよ」

「絶対に学校行け」

「行かんかったら許さん」

そう怒鳴られ部屋に一人残されました。

そう言われても、私は学校に行く事が出来ませんでした。

行かないといけないことは分かっていても行けないと説明しても、

分かってはもらえず、髪を引っ張られ引き摺られました。

私の中で積もり積もった想いがまたも爆発し、

私は母に言ってしまいました。

「そんなんだったら生まなきゃよかったじゃん」

失敗でした。

母を悲しませ、余計に怒らせてしまいました。

「あんたみたいなのが生まれてくるとは思ってなかったわ」

母はきっと売り言葉に買い言葉だったのでしょうが、

私は深く傷つきました。

誰からも理解してもらえず苦しい毎日でした。

父も母も、二人の意見に相違はなく、

私には頼れるところも逃げ場所もありませんでした。

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