母に壊された人生

第1話 

[はじまり]


平凡な家庭に生まれた私は、

金銭面で何一つ不自由のない生活を送っていました。


私の人生の歯車が狂い始めたのは、小学六年生の頃。


母と喧嘩が絶えないようになってきました。

昔から母は、子供を叱るときに手が出る人でした。

そうでもしないと言う事を聞かないからと母はいつも言いました。

口答えをすると、青あざができるまで頬を抓られ、

結果の過程を聞くときは、隅まで追いやって腿間を蹴られ、

手癖が悪いと、手のひらをハサミで挟み切ろうとしてきました。

「生まなければよかった」

「あんたなんかうちの子じゃない」

こんな罵倒は序の口で、ある時には

「野垂れ死ねばいい」

そう言われたこともありました。


私は三兄弟の末っ子として生まれたので、

物心つく頃には母は上の兄弟に付きっきりで、

これと言って母との思い出がありません。

したかった習い事も我慢し、

小学一年生から家で留守番は当たり前。

母が忙しい平日は、

一人でご飯を食べて

一人でお風呂に入り

一人で眠りにつきました。


そんな我慢や愛情不足の蓄積が、その日の

「あんたみたいな子生んだ覚えない」

という普段ならなんともない言葉で爆発したのでしょう。

幼いながらに、こいつの目の前で死んでやろう、

そう心から思いました。

しかし、そんな勇気もなく手首から少量の血が流れただけでした。

これを母が見たらきっと心配してくれると思っていたのですが、

大変浅はかでした。

「気持ち悪い」「死ねるわけないじゃん」

この二言で片付けられてしまいました。


その日から私は母に対してあまり期待をしなくなりました。

上の兄弟と比べて、出来が悪かった私。

母からしたら、本当に要らない子だったのかもしれません。

喧嘩をするたびに、同じように罵詈雑言を浴びせられ、

同じように殴られました。

暫くすると、それに加えて

無視や怒られた人だけ育児放棄されるようになりました。

子供はかわいいものです。

そんなことをされても私は母が大好きでした。

怒っていないときは普通の母親で、

料理も得意でおいしかったです。


しかし母の堪忍袋に触れると、そんな風になってしまうので、

母の顔色を窺って、怒らせないように必死でした。

怒らせてしまった日は、何をされても受け入れひたすら謝り、

泣きながら手首から血を流す。

この繰り返しで高校一年生まで成長しました。

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