第27話 少女のための鏖殺作法――男の娘だよね?
「少女のための鏖殺作法」高原英理
『幻視の文学1985』に収録
アトリエOCTA たぶん1985年
注・高原英理の本名は加藤幹也(男性)で、佐藤弓生(女性)と結婚している。
むかしむかし、「幻想文学新人賞」という素晴らしい賞があったんですよ。
選者は澁澤龍彦と中井英夫。
SFでいったら、クラークとアシモフが選考委員、のようなものです。
第一回の受賞作がコレ。
「少女のための
鏖は「みなごろし」の意味です。
……が、この作品、どマイナー雑誌『幻視の文学1985』以外には、どこにも収録されていないようなんです。
あんなに素晴らしい作品なのに!?
ここで、その内容をご紹介。
===
まず、舞台はどこともしれぬファンタジックな異星。
ナウシカみたいな、奇妙な生物がたくさんいる惑星だと思ってください。
主人公は、羽をもつ美しい女の子の妖精です。
そして「母たち」というのがいるんです。
元は妖精だったけど、今は半ば植物化して動けず、毎日毎日、生殖のための活動を行っています。
すごく太って醜いものとして描写されています。
(この惑星には「父」というものはいません)
妖精は「母みたいにはなりたくない」と思いつつも、いずれ時がくれば、母にならざるをえないことにウンザリしてます。
ある日、その惑星に悪魔がやってくるんです。
悪魔は男性ですっぱだかで、妖精ははじめて見るその姿にびっくりします。
悪魔は妖精に「剣」を授けて、こうささやきます。
「この剣を使えば、この惑星を滅ぼせるぞ」
なんで妖精がそんなことをするかといったら、自分が母になる運命を変えたいのと、悪魔に恋をしていたからです。
妖精は、惑星を滅ぼします。
そして、愛しい悪魔のもとにおもむく。
だが、悪魔は妖精を殺そうとする。
「なんで私を殺すのよ。私はかわいいでしょ?」
「おれたちは殺戮しか知らないのだ」
そして妖精は死に、悪魔は焦土となった惑星を征服するのだった。
===
……という、母親との間に何かトラウマを抱えた娘が書いたとしか思えない、ゆがみまくった作品です。
高原英理って、ちょっと女性っぽい名前ですよね。
そして「幻想文学」初登場時には、帽子をかぶったロングヘアの女性としての写真が掲載されていたんですよ!
なにせ、異端文学雑誌ですからね。女装写真くらい載せますよ。
けっこう美人に写ってました。
(もう忘れてやれよ……)
今は書評家として有名ですが「少女のためのゴシック文学館」とか「少年愛文学選」とか、ヘテロ男性が取り扱うとは思われないようなジャンルばかりですよね?
だからあ、高原さんは男の娘作家だと思うんですよ~。
今後とも益々のご活躍をお祈りいたしております。
そして、ぜひ「少女のための鏖殺作法」を、どこかの本に収録してください!
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