第18話 犬――畜生道に堕ちよ!

「犬」中勘助

(岩波文庫 緑 51-4)

1985/2/18



みなさま、中勘助って、どういう作家だと思いますか。

キラキラ美しいエッセイ「銀の匙」が有名ですよね。

でも、それだけじゃないんですよ。


「犬」の舞台は古代インド。

主人公は、醜い老いたバラモン僧。

ある日彼は、娘が願掛けにやってくるのを見かける。


娘は、敵兵に身を汚されてしまった。だけど相手に恋をしてしまって

「彼に会いたい」と願う。


バラモンは「愚かな娘め。そちはたぶらかされておるのだ」とか何とかいう。


そのうちバラモンは、娘に道ならぬ恋心を抱いてしまう。


――法力発動!

バラモンは敵兵を呪い殺す。

そして娘を独占するため、

バラモンは娘に「これもシバ神の思し召しだ。わしらは夫婦になろう」という。


それで犬になったバラモンと娘の、どんづまりエロチカ小説がはじまります。



娘さん、かわいそうー……だけではないんです!


バラモンはもちろんクズ。

敵兵は、軽佻浮薄なイケメンチャラ男で、娘は単にヤリ捨てしただけ。


しかし娘も、敵兵にレイプされておきながら、相手がイケメンだってだけでホイホイ惚れ込むようなパープー娘として描かれているんです。

そこがすごく面白い。



えー、中勘助は、どうも兄嫁に惚れていたようで。

そういう三角関係を前提として考えると、この小説の恐るべき情念がちょっと理解できるような。

でもそれだとしたら、兄嫁をパープーとして見ていたということなのか……。



おお、なんと罪深い、あさましい、畜生の性を描ききった、ものすさまじい小説であろうか。


最高です。

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