第10話 通りすぎた奴――エレ弁

「通りすぎた奴」眉村卓

『日本SF全集 1 1957~1971』に収録されています。図書館にあるかも。2009/6/25



舞台は、未来都市。

ひとつの街が、超高層ビルの中に入っています。


住人はみんな、高速エレベーターを使って移動している。

大型のエレベーターには、エレ弁売り(エレベーター弁当)がいるくらいです。


その描写がいいのです。

ボルヘス的円環というか、山尾的な腸詰宇宙というか。


主人公は、平凡な一市民である「ぼく」。

ぼくはある日、エレベーターを使わずに徒歩だけでビルを登っている変わり者を目にする。

彼は、いつしか「旅人」と呼ばれるようになり……。



眉村卓の作品では「ごくごく平凡な主人公が、地道にこつこつ努力して、自分の才能の限界に葛藤しつつも、人や組織との折衝を通じて、精神的に成長する」という王道パターンがあります。


なろう、カクヨムでは、不人気ぶっちぎりの作品に思えますね(笑)


ところが!

この作品では、羊のように思えた主人公が、ラストで……。



SF的ガジェットを使いつつも、幻想文学の極北に到達した、至高の傑作!

なのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る