34 夏焼 しんみりする

 人の家って、暖かいな。今みたいにみんなでご飯食べるって、幸せだなぁ~。肉じゃが美味いなあ。冬川家に感謝だ。


 俺が着てた服はお姉さんが洗ってくれた。ちょっと恥ずかしかったけど、今更って感じもしたから俺はもう開き直って履いてたパンツを洗濯機に放り込んだ。今は和室の突っ張り棒に、他の洗濯物と一緒にぶら下がっている。


 夕食のお礼に、俺は冬川に勉強を教えることになった。

「あんたの学校がエスカレータ式で大学行けるっていってもね。あんまり成績悪かったらふるい落とされるからね!」

 とお姉さんにクギを刺された冬川は、恨めしそうに俺を見てため息をついた。おいおい、俺から勉強教わるのがそんなにイヤか?

 あぁ、俺なら心配ないよ。楽勝。今の時点でもう合格確定枠だから。


 その流れでこの日は冬川家に泊まることになった。一応、家に電話を入れておく。電話に出た親父は7コール目でようやく受話器をあげた。ぶっきらぼうな声が聞こえる。「俺、カイト」って言うと、親父は唸るように返事をした。友達の家に泊まるって伝えたら、「迷惑かけないように」と残して電話が切れた。


 受話器を置いてリビングへ戻ると、お姉さんは「よかったね」って言って、ダイニングテーブルに座りビールを飲んだ。

 俺と冬川はローテーブルに並んで教科書を開いた。冬川は終始仏頂面だったけど、苦手な公式の応用ができるようになると喜んだ。お姉さんは楽しそうに頷いていた。

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