17 冬川 ドンキの帰り 目撃

「ちょっとドンキ付き合ってよ」

 姉の一言で、僕は学校から帰ってすぐに狸小路のドンキに行く羽目になった。僕が否定的な顔をしたのがバレたのか、姉は握りこぶしを作ったけど「サブロク線沿いの美味いパフェ屋に連れてってあげる」と言われ僕は着替えて同行した。


 ごちゃごちゃしたドンキの店内で家電を見て回る。姉は新しいホットプレートを買っておいてと言われていたようで、それを見に来たんだ。ついでに姉好みの化粧品やらブランド品を眺め、気が済んだところでようやく、そのパフェ屋に連れて行ってくれた。


 パフェ屋というより食事メニューが豊富な喫茶店って感じで、僕は少し大人な気分になれた。パフェももちろん美味しかった。僕が満足そうにしていると、姉が「来てよかったでしょ」と言ったので僕は頷いた。


 店を出て駅に向かう途中で、僕は見覚えのある姿を目撃した。この夜の街を制服姿でウロつくなんて。しかもあれはうちの高校の制服じゃないか。


 いや、あれって、夏焼じゃないか?



《こないだススキノでさぁ……。いかにもって奴らとツルんでたんだって。噂じゃ夜な夜なドーリとススキノ徘徊して……》


 僕の頭に、クラスのギャル、高岡の言葉が浮かんだ。

 どう見たってあいつは夏焼だ。良くも悪くもあいつは目立つ。なんだって制服姿でススキノにいるんだよ。


 っていうか、既に目を付けられてるっぽいな。あれ、補導員じゃないのか? 

 あぁ、あぁ、やっぱり声かけられてるじゃないか。

 少しは困ったようなそぶりしろよ、何堂々としてるんだよ。


 僕は無意識にそちらへ駆け寄った。すると、夏焼が僕に気づいたのか、すごい笑顔を見せる。

「よ~! 冬川じゃん、こんなとこで……」

「こいつ僕の弟で、三人で出かけてたんですぅ!」

 夏焼の言葉を遮って、僕は二人の間に割り込んだ。僕の目はぐるぐる回っていたけど、勢いで喋り続けた。それしかなかった。


「こいつ、すぐ迷子になって、方向音痴なんです! あと、あれ、あの人!」

 僕はこちらに駆け寄ってくる姉を指さした。

と三人で映画見た帰りってだけで、なんの問題もないです。じゃ!」

 補導員は姉の姿を見て納得したのか特に僕たちにクギを刺すことなく去っていた。間際にすれ違った姉が会釈する。あぁ、お姉様。空気の読めるお姉様。


「どうしたんだ急に。ていうかさ、なんで俺が方向音痴だって知ってんの? エスパー?」

「そんなわけないだろ」

 僕がいやいや返事をするのに目もくれず、夏焼は姉に向かって「こんばんは!」と挨拶をした。僕は姉に「同じクラスの夏焼くん」と小声で紹介する。

 姉の顔が明るくなった。僕に友達(友達じゃないけど)がいるのが嬉しかったみたいだ。


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