久し振りのお友達
それから私達はほぼ毎日、会い続けた。
私は生まれつき足が不自由だから基本、
トントントン……。とノックする音が聞えた。
「おはよ、あす!」
「おはよう。今日の調子はどう?」
もう私達はすっかり打ち解けてなんだか姉妹みたいな会話をしていた。
「今日は元気だよ!ねえねえ。あの続きできた?」
「もうちょっとでできるよ」
「おお!早く読みたいな〜」
私達は私の小説を
人生で1番楽しいのは
「ねえ、今日は何しよう?」
「あ、今日はお母さんが色えんぴつ持ってきてくれたんだ。だから一緒にお絵かきしない?」
「いいね!やろう!」
「おまたせ!何描く?」
「えーっと……じゃあお互いの顔描いてみようよ」
「私はあすちゃんを描くってこと?」
「うん」
私達は黙々とお互いの顔とスケッチブックに目線を交互に移す。
「ねえ」
と沈黙を破るように
「なに?」
「あすちゃんはなんで入院してるの?足の手術みたいな感じ?」
私が持っていた色えんぴつは止まる。
足の手術と推測したのは私が車いすに乗ってるからだろう。実際に私の足はもう二度と動かない。
でも、今入院している理由は
「……うん」
「そっか。治るといいね」
数日前、私は車いすから降りて少ししか動かない足で歩道橋によじ登った。登るのに30分くらいかかった。
なんとか歩道橋を登り終えるとちょうど夕日が私を照らしてくれた。
「諦めるな」とか「希望を持って」とその夕日は言ってた。でも希望なんて掴もうとするだけ遠ざかる。
私は夕日に背を向けて歩道橋の下を見る。
何十台のも車が行き交っていた。クラクション。車が走り抜ける時のビュンという音。楽しそうな人の笑い声。自転車が段差を乗り越えるガチャン!という音。
そして私のドクンドクンと波打つ音。スーハースーハーと繰り返す息のネ。
「もうこんな世界に用はないや」
その言葉だけを捨てて、私は歩道橋から落ちた。
でも、そんな私を、神様は殺してくれなかった。なんでだよ。死ぬときくらい自由にさせてよ。
「できた!」
と
「ごめんびっくりした?」
「ううん。大丈夫。できたの?」
「うん!見て!」
私は
「わあ……!」
「すごい。絵上手いね」
「そう?あすちゃんがそう言ってくれて嬉しい!」
と、
「……う」
「え?大丈夫?」
「……あうん。大丈夫。ちょっと動きすぎちゃったかも……」
彼女はお腹あたりを手で抑えて何回も咳き込む。
「今日は無理しないで、もう病室に帰った方がいいんじゃない?」
「……うん。ごめんね。明日、あすちゃんの絵も見してね」
そう言うと彼女はゆっくりと立ち上がって私の部屋を出る。ホントに大丈夫かな……?
あの人の余命はあと半年。
それまでに何かしてあげたい。もちろん、彼女と一緒に過ごすっていうのもそうだけど。他に彼女が喜ぶことないかな?
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