片手のない幽霊
ボウガ
第1話
一児の父親であるAさん一家の近所には、片手のない幽霊がでる。夕暮れ時にあらわれ、人をみつけるとおいかけてくる。妻と話をする際に不審者じゃないかと話をしたりする。それに驚いた人がけがをしたり、不幸な目にあう事が続出。隣人のBさんもその噂をしていた。
日仲の良かった両家は日頃から交流をしていた。ある日Bさん宅でバーベキュー、同じ年の小学生のA,B両家の長男の息子二人も仲良くあそんでいた。
夕暮れ時、Bさんの子供が
「またでたあ!」
と叫ぶ。
「何がでたの、ゴキブリ?」
Bさんの妻が尋ねると
「ううん!手!」
Aさん一家の顔がそちらに釘付けになる。あけ放たれたリビングのドア、その向こうで、塵取りに人の腕らしきものがホウキでひろわれ、それをBさんの妻はゴミ箱にすてた。その時はっきりみえたのだが、その腕は向こう側が見えるほどに透けていた。明らかに人のものではなかった、幽霊としか思えない見た目だ。
AさんがBさんに尋ねる。
「一体何を、あれは噂の霊の腕ではないのですか?」
「まあ、そうかもしれないけどねえ」
「なぜ、あの幽霊にかえさないのですか?」
「ああ、私はアメリカ人じゃないですか」
そうだ。ここは外国人が移り住むことの多い住宅町だった。
「キリスト教では自殺は禁止されています、それに、人に悪さをするのは幽霊ではなく悪魔なのですよ」
そうか、この人たちは“あの事を知っているのか”とAさんはおもった。Bさん一家がひっこしてきたのはこの家に住んでいた前の住人がひっこしていってすぐ、2か月ほど前のことだった。前の住人は、家の中で“不審なもの”を発見したといっていたが、それからその家族には不幸が続いたという。なんとなく、近くで電車の通路があり、ごくたまに人身事故がおこることから、人間の体の一部ではないかとおもっていたが、まさかあの幽霊が欲する手だったとは。
(まあ、風習や文化が違うなら、もしかしたらこの人たちは嫌な目にあわないかもなあ)
だが、そのあと何かあったのかしらないが、その一家はみるみるやつれ、不健康な様子になり、それから1カ月と絶たぬうちに引っ越していった。廃屋になったその家の跡地には、件の亡霊がでると噂になった。噂では、電車に飛び降りて死んだ霊だというが、順風満帆な人生を送っていたある所帯もちの男性だったという。
片手のない幽霊 ボウガ @yumieimaru
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