第4章 男子禁制81 土蜘蛛退治2

 四天王の二人が舞台に出てきたのを見ると、土蜘蛛の面の奥の眼光が怪しく光った。もはや優斗に自我の意識はないに違いない。


 それでも舞は続き掌に仕込んだ白い蜘蛛の糸がパッと広がると拍手が起きる。桃李と怜も動きをピッタリ揃えて稽古のとおりに刀を使って紙の糸を巻き取り舞を続けた。


 二人が巻き取った糸は舞台の裏方が素早く幕の裏に引き取ってくれる。


 糸の噴射は二回ある。二回目も上手く糸が広がり、四天王が糸を刀で引きちぎり、糸は舞台裏へと消えていった。土蜘蛛が一層派手な衣装に早替えをすると拍手がおきた。


 このあと四天王が二人そろってくるくると回り続けながら衣装の早替えをする見せ場が待っている。すると土蜘蛛が口から糸を吐き出した。それは蛍光紫で舞台上を浮遊し始めた。当たれば電気が流れように火傷する。


「気を付けろ桃李! 本物だ」

「分かってる」


 二人はくるくる回りながら糸に捕まらないように動きを合わせて舞台を移動して逃げた。舞台袖から見ていた啓介も驚き、楽器奏者たちも腰が浮きそうになったが本番中なので動けず演奏を続ける。


 舞台を見ていた紫生と亜羽も同時に「あ」と声を出した。


「プッチ、あれって」紫生が聞くと「フェノメノンだ!」とプッチが答えた。


 以前目の前で怜があのイソギンチャクのお化けに巻きつかれて全身が焼けただれて瀕死の重傷を負ったのを思い出す。幸いにも桃李の魔力で一命を取り留めたのだ。見た目はキラキラと蛍光色に輝き浮遊して美しいので観客たちは演出の一つだと思って全く気付いていないどころか完全に見入っている。


 だが一旦空中で静止していたイソギンチャクは食虫植物のようにムワッと口を広げると一気に二人めがけて食いついてきた。二人は瞬時に回転しながら二手に分かれてその間をイソギンチャクが通り抜けたので場内から拍手が起きた。


「おい、怜。いつまでもこうしていられないぞ」

「仕方ない。あれで行こう」

「よし」


 二人はまた息を合わせてくるくると舞をシンクロさせ身に着けていた衣装を剥ぎ取り一瞬でハンターのガウンに早替えをした。


 するとまた場内から大きな拍手が起きた。


 「嘘でしょ!」と紫生と亜羽だけは肝が冷えて両手で口元を覆った。

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