第4章 男子禁制74 女の闘い4

 さきほどからハラハラしながらリビングの入口をチラチラと見ている。


 一方、本当に玄世が桃沢家に気分を害しているのかどうかをその表情や態度から読み取ろうとしているのだが、不快感を抱いているようには見えない。


 それとも伍代夫人のいうとおり自制心で不快感を見せないようにしているのだろうか。いっそのこと聞いてみたい気がしたが、聞くタイミングがこない。犬井と礼子も玄世が来ていることを知らないのかやってこない。


 知っていればいくらなんでも来るはずだ。あれこれ考えているうちに玄世は早々に桃沢家を後にしたのでホッとした。


 玄世の言葉が効いたのか、桃李と怜はしばらくリビングで静かに動画を見ていたが、どちらからともなく練習するといって二人だけで神楽の郷へ怜の運転する車で帰っていった。


***


 翌日、紫生は午後の講義を終えてカフェで巴萌とソフトプリンを食べていた。巴萌だけには二人が頼まれて神楽のボランティアをしていると話した。それは嘘ではない。


「あの二人が息を合わせるって大変そうね。喧嘩しているところは見てみたいけど。でもよく一緒にいるよね」

「そうなんだよね」まさか同じ魔族で鬼退治に行っているとは言えない。


「とにかく誰でもいいから適当にどこにいるか連絡しておいてっていったのよ。面倒でしょ、あちらの方たちが」


 といって紫生が前のテーブルに集まっているモモノフたちをチラッと見た。今日もいつもの定位置に集まっていつものように派手だが桃李がいないので殺気立っている。もしかして彼女でもできたのではないかと。


 そこへ美咲がやってきて「名藤さん」と声を掛けらた。


「なに?」来た! 総大将。

「この前、体調が悪かったみたいだけどもうよくなったの?」

「へ?」


 一体何のことかと思ったが、美咲たちと一緒に行った雑貨屋でリサの姿を見て気分が悪くなり先に帰ったことを思い出した。あの直後に魔本家に連れていかれ、書き魔に任命されたりしたのでそのインパクトが強すぎて雑貨屋のことなどすっかり忘れていた。美咲と話すのはあの日以来だ。


「あ、ああ。気分が悪くなったんだけどもう大丈夫だよ。ありがとう」


「なら良かった」といって美咲は微笑んだ。

 気分が悪くなった? 機嫌が悪くなったの間違いでしょう。この様子だとやっぱり仮病だったんだ。


「桃沢君、最近大学に来てないわね」

「え? そう? 全然気づかなかった」


「へえ、そう」と明らかに疑いの目を向けつつも美咲はモモノフのテーブルへと行ってしまった。


 紫生は巴萌とチラッと目を合わせてから、ホッと胸を撫で下ろした。


 それから少ししてからのことだった。いきなり


「桃沢君から連絡来たぁー!」と美咲が周囲に響き渡るように叫んでスマホを持ち上げた。

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