第4章 男子禁制75 女の闘い5
「ええ! 嘘ぉ~」
「どこにいるの?」
「すご~い」
とモモノフが湧きたった。
さらに美咲は「黒沢君も一緒だってぇ~」と通路を挟んで隣に陣取っている黒沢会のメンバーに聞こえよがしにいった。黒沢会が騒然となり美咲に注目した。
どうやら紫生に言われて桃李が美咲に返事をしたらしいがそんなこととは知らない美咲はローマ法王からクリスマスカードを受け取ったように悦に浸っている。何しろ誰もが知りたがっている桃李の居場所を自分だけが知っているどころか桃李本人から連絡が来たのだ。
しかも黒沢怜の居場所まで。モモノフが一歩リードしただけでなく、黒沢会まで自分が支配下に収めたような気分だ。さらに美咲は敢えてメッセージを声に出して読んで聞かせた。
「『怜と一緒に黒沢家の親戚の法事に来たら二人ともインフルに掛かったんだ』ですってぇ。かわいそうに」
「わざわざ大声で読まんでも」と紫生がいうと
「いやマウント取りたいんでしょ。罪な男だねぇ、桃李も」と巴萌が頷いた。
あっという間にこの情報が両ファンクラブを通じて大学内のボードに拡散した。モモノフは「世界一喪服が似合う男」と謳い、黒沢会は「世界一セクシーな喪服姿」と称した。
誰かに連絡しろとは言ったがよりによって美咲に連絡をするとは。なぜか紫生は面白くなかった。桃李は美咲のことをどう思っているのだろう。
それにしてももう少しましな嘘はなかったのかと半ば呆れながら燥いでいる美咲を見ていると手元のスマホ画面を見ていた美咲が顔は下を向いたままいきなりゾッとするような上目遣いで紫生を睨みつけた。
馬鹿にして見てんじゃねえよ。とその眼は言っていた。
紫生の全身に恐怖が電流のように駆け巡った。燥ぎながらも紫生の様子を意識していたに違いない。全ては紫生への当てつけだったのだ。
「うわ、こわっ。いまこっち睨んだよね」と巴萌がいった。
「うん」
気分が悪くなったので二人はすぐにカフェを出た。正門に向かって歩いているとドクタ・カレンに会った。カレンに会ったことで紫生の心に溜まっていたどす黒い恐怖がパッと吹き飛んだ。
「桃沢君と黒沢君を見かけないけどどうしたの? 女子生徒たちが噂しているわ」
「わたしもよく聞かれるんですけど、知らないんです」
ドクタ・カレンにまで嘘を付くのは心苦しかったがシラを切りとおしてすぐに大学を出た。
***
『MAZOKU Journal #13
玄世様が再び桃沢家をご訪問。桃李と怜が取り逃がしたのはフェノメノンではないかといわれた。土蜘蛛退治を命じられた二人はまるで四天王の様に鬼退治に出掛けて行った。そのとき気付いたのだけれど、魔族って孤独。
ところで桃李と怜がいないことで大学のカフェがピりついている。こっちにも鬼が出そうで怖いくらい』
***
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