第3章 魔本家への召喚61 桃沢家の危機2
礼子と桃李が顔を見合わせ黙り込んだのを見て夫人はびっくりした。
「あらやだ! 本当なの? なんてこと!」
いやあれは、プッチが勝手にいったことだと説明したが時すでに遅しで全く夫人の耳に入らない様子。
「おばさん、一体誰がその話を広めているんですか?」
桃李が聞いた。
「誰って玄世様しかいないでしょう。随分ご不快に思われたそうよ」
「でも玄世様はうちでは気になさってる様子はなかったわ」
と礼子がいうと伍代夫人は
「それは当り前。玄世様くらい育ちのいい方ともなれば、態度には出しませんよ。将来魔族を率いるべく育てられた方だし、自制心が強いことで有名な方ですから。でも考えてもご覧なさい。初めて会った人たちにあれこれ無心されたらねぇ。誰だって不愉快でしょう」
「だからわたしたちはそんなことはしていません」
紫生がやや強めにそういうと伍代夫人は目を見開いていった。
「まあ、あなた。その調子で本家で紅亜様にも喰ってかかったそうね。さすがだわ」
ダメだこりゃ。これでまた話は大きくなって広がるのだろう。
案の定、それから数日以内に嫉妬も相まって話に尾びれ背びれがつき話が大袈裟になって広まっていた。これには礼子もショックを受け、体調を崩してしまった。
「玄世様は相当我が家での対応がお気に召さなかったのね」と亜羽がいった。「我が家はとんでもない汚名を着せられたわ。危険運転を許すんじゃなかった」
この噂が広まってから亜羽は玄世に対して強い憤りを感じており、嫌悪感を抱くようになった。
「本当に玄世様なのかな。だってあの時は全然不快に思っている感じじゃなかった」紫生はあの玄世がこんなふうにペラペラを話すだろうかと未だに信じられない。
「だって、誰がほかに話すの? 玄世様以外はみんな身内だったのよ。玄世様以外知り得ない話が魔族中に知れ渡ってるんだから発信源は玄世様よ。もしかしたら、玄世様は悪気なく話したのかも知れない。それが悪意のある人たちにまで伝わって意図的に広められたのかもしれないわね。何しろ我が家は何かと注目されているから」
「それならあり得ますね」
「でしょう。けどね、気に入らないのは玄世様がその場で文句を言わずに家に帰ってグダグダいったことね」
「本家のプリンスだからな。いじられることに慣れてないんじゃないのか? 本家の人間なんてそんなもんさ」とプッチ。
「全く。それに誰もが自分と結婚したがっているなんて思わないで欲しいわ。確かにイケメンよ。けど自惚れも強いのね。そもそもわたしは魔族と結婚する気は無いの。わたしは人間と結婚するつもりよ」
「本当ですか?」
「マジかよ?」黙って話を聞いていた桃李もさすがにこれには驚いた。
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