第3章 魔本家への召喚59 わたしが紫式部?2 

 夕飯を終えると、桃李と紫生と怜の三人は桃李の部屋に集まり、玄世から聞いた話に話題が及んだ。


「姫野さん、元気そうでよかったけど、まだ混乱しているみたいね。桃李を覚えていなければいいけど。もし覚えていたり、思い出したらどうなるの?」


 桃李と怜は黙り込んでしまったのでそれ以上を聞くのが怖くなり話題を変えた。


「魔族を狙っている人間たちって誰だろう? 怖いわ」

「魔族の家には結界が張ってある。そう簡単には俺たちには近づけないから心配するな」


「だといいけど。『眠りの時』に備えて物語を書くなんて、引き受けるんじゃなかった。みんなそれを知らないからはしゃいでいるけど」


「自由に書いてみたらいいよ。僕たちも協力するから」と怜。


「ところでお前がいま投稿サイトに投稿している小説ってどれだ? 教えろよ」と桃李が聞いた。


「教えない」


「なんで。さては俺たちのことを書いているな?」

「なんだっていいでしょう」


「怜、お前からも聞けよ」

「僕は他人のSNSやそういったものに関心がないからね。好きに書けばいいさ」


「さすが怜ね。ありがとう」


「いや、格好つけてるけど家に帰ったら必死でエゴサーチするぜ。そういうタイプなんだ」

 と桃李はいった。桃李の発言には取り合わず怜が立ち上がった。


「そろそろ僕は失礼するよ。なんだか長い一日だったな。魔本家に連れて行かれるとは…あ!」


「どうした?」


「しまった。試着室に長野さんを置き去りにしたままだ」


 ええっ! と桃李と紫生は驚いた。


 ***

『MAZOKU Journal#10

 ブレードとは、魔族のハンターーだけが使う光の刃物。本来変幻自在に使えるものらしいが、どこまで操れるかはハンターの腕次第。


 以前桃李と怜のブレードをうっかり比較したら桃李が拗ねたことがあったので、以来ブレードには言及しないことにした。


 プッチに「男の大事なものの大きさを比べちゃダメ」っていわれた。ただわたしが知る限り、玄世様のブレードが最高なのは間違いない。


 そしてそしてなんとこのわたしが魔族の命運を左右する『書き魔』候補になった。責任重大なんてものじゃないけどやってみたいという気持ちもある。


 常に今の自分の実力よりちょっと上の仕事を引き受けて行かなければ成長はないと玄世様にいわれた。それに玄世様に認められたというのが嬉しい。


 とはいえやっぱり不安。そして玄世様の突然の桃沢家の訪問により、桃沢家は魔族からとんでもない嫉妬や誤解を受け窮地に立たされることに。この先どうなるのかしら。』

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