第3章 魔本家への召喚52 狩りの生き残り1
「え? もうご存知なんですか?」
「だからそういうことだよ」玄世は苦笑しながら答えた。「『悪役令嬢にしてやる』っていったらしいね」
「あの、ついうっかり」
慌てる紫生に対して、玄世は面白がっているようだ。
「明日には魔族中に知れ渡るだろう。けど一番手強い相手に真っ先に宣戦布告したから今後はむしろやりやすいはずだ」
「は、はい。あの、ところでその物語はいつまでに仕上げればいいですか?」
「それなんだけど」玄世は急に神妙な顔つきになり海の方をチラッと見たので、紫生はすかさず「海、プッチを探してきて。急にいなくなっちゃったから」
「はーい」
海がリビングを出ていくと玄世は話し始めた。
「きみたちの同級生で、鬼に襲われて入院している姫野という子を覚えているかい?」
思いもよらぬ名前がいきなり、しかも玄世の口から出たことで紫生たちはびっくりした。
忘れるはずがない。姫野は、かつて
しかし、その後遺症で心を病み、精神病院に入院しているという噂が流れていた。
以後、姫野がどうなったのかその消息は全く掴めないまま、紫生たちは高校を卒業した。久しぶりに聞く姫野の名前に紫生の心は激しく動揺した。
「入院しているという話を聞いたのが最後で、どこに入院しているのかも分かりませんし、その後どうなったのか僕たちにもわかりません」と怜が答えた。
「実は僕は、ずっと彼女の状況を追っていたんだ」
「玄世様が?」
桃李と怜は顔を見合わせた。
「姫野さん、元気なんですか? どこに入院しているんですか?」
紫生も思わず身を乗り出した。
「元気だよ。ただ、あれを生きているといえるかどうか……。今も錯乱していて当時のことも覚えていないようだ。この前僕がいったとき、たまたま切れかかった街灯が点滅してね、激しく混乱して危うく海に飛び込むところだった。今でも鬼に怯えているようだ」
しばし言葉を失っていたが、桃李が聞いた。
「玄世様、どうして姫野の様子を見ていたのですか?」
「彼女は、桃李を目撃しているかもしれない。彼女が正気を取り戻した時にきみを思い出したら大変なことになる。それで定期的に様子を見に行っていたんだ」
「まさか、姫野が記憶を取り戻したんですか?」
怜が聞いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます