第3章 魔本家への召喚43 絶体絶命2

「へ?」

「紫生、お前は我々のことを公表しているであろう」と由良がいった。


 桃李と怜が驚いて紫生の顔を覗き込んだ。紫生たちの生死に関心がなさそうな紅亜までが驚きの表情を浮かべオハラと紫生の顔を交互に見てから、紫生の返事を待った。


「どういうことだ? 紫生?」桃李が聞いた。

「えっと、それは…」

「本当か?」怜も聞いた。


 ちょっと待ってこれはどういうこと? 

 わたしの書いている「M&R」のことをいっているの? 

 あんな星の数ほどあるネットの投稿小説までこの人たちは探してチェックしているっていうの? 

 いえそれは不可能だわ。ペンネームだし魔族が登場するストーリィはそれこそ山ほどあるんだから。絶対大丈夫。


 そう自分に言い聞かせた


「この娘は我々のことをネット上の投稿サイトで小説にして公表しているのだ」

 由良の発言に紫生は絶望した。


 間違いない。バレてる。全身から血の気が引いた。


「オハラ様」桃李がいった。「それは違います。紫生がそんなことをするはずがありません。はっきり言って本家で怖い目に合ったって、未だに怖がっているんです。それなのに怒りを買うような真似をするわけがありません」


「それに」と怜も続けた。「魔族がどういう状況におかれているか、彼女はよく分かっています」


「紫生、どうなのだ?」オハラが聞いた。


「紫生、はっきり否定しろ」桃李が慌てて紫生に促した。

「そうだよ紫生。遠慮はいらない」

「はい、書きました」


 桃李と怜は電池が切れたように動かなくなった。


「あ、あの。ごめんなさい。だって作り話ってことで書いてるし。まさかバレるなんて。もちろん名前も場所も設定も変えてるのよ」

「そんな問題じゃないんだよ!」桃李は声を荒げた。


「申し訳ありません」紫生は声を震わせオハラたちに深く頭を下げた。


 今日私はここから生きて帰ることはもうできないんだわ。海の顔が脳裏に浮かび涙が溢れてきた。


「オハラ様、どうかお許し下さい。投稿は即刻削除させます」 

 隣にいた桃李も一緒に頭を下げた。


「僕たちが気づいて止めさせるべきでしたが、気付きませんでした。僕たちにも責任があります。どうかお見逃しを」


 怜も懸命に訴えたが、すぐに由良がこういった。


「ならぬ。その娘がやったことは我々の存在を知らしめ、一族を危険に晒すことだぞ。それでなくともお前たち貂の末裔はハンターの輩出が少なく、一族への貢献度が低い。

 ようやく桃李がハンターになり一族のために役に立つかと思いきや、今度はその娘が我々の存在を暴露するとは、とんでもない裏切りではないか。

 その娘が桃太郎様の末裔とはいえ、とても許されることではない。所詮、人間よ。我々の命を軽んじておるのだ。連れて行け」


 由良が合図をするとどこからともなく黒装束の男性数名が現れ紫生を取り押さえた。

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