第3章 魔本家への召喚42 絶体絶命1
海がいないか周囲を見回したがいる気配はない。
紫生は小声で怜に五人について素早く説明した。
中央にいるのが魔本家の当主
前回同様オハラと由良は黒いスーツ姿で、氏十は頭から黒いフードとマントを被り、自分の背丈よりも長い杖をついていた。
三人とも相変わらず全身にまばゆいばかりの宝石を身に着けている。本家の人間は魔除けに宝石を身に纏うのだ。
怜は由良だけには見覚えがあった。
怜のブレードを止め瀕死の重傷を負わせた上、紫生と桃李と海を冥界に突き落とした張本人だからだ。
そして一番右端は真っ赤なロングレザージャケットを着たオハラの娘、
やはりこの前見た雑誌のモデルは紅亜に間違いないと紫生は思った。
そして左端はオハラの甥で魔族の筆頭ハンター
一年前由良によって冥界に突き落とされ、数千という鬼に襲われた紫生たち三人を一瞬でブレードで切り裂いて救い出したのも、殺される運命にあった海を「勇者」と認めて生かしてくれたのも玄世である。
不安と恐怖でたまらない紫生だが玄世がいるならば殺されないかもしれないと少し落ち着きを取り戻した。すると怜が紫生の耳元で囁いた。
「いいか。きみは黙っているんだ。僕たちは何も悪いことはしていないんだ」
「う、うん」
「久しぶりだな、桃李」オハラが口を開いた。
「はい。お久しぶりでございます」
「うむ。黒沢怜。ここは初めてだな」
「はい。初めてお目にかかります」
オハラは静かに頷いた。「お前たちが水の術と火の術を復活させると約束してからそろそろ一年経つ。あの件はどうなった?」
「あ、あの。努力はしていますがまだ…です」桃李は正直に答えた。嘘を付いたところで全く役には立たないのは分かっている。
「ふん」今度は由良が話し始めた。「お前たちの術を復活させるのを条件に、紫生と弟の命を助けるといったはずだが。いつまで待てばよい?」
「長らく絶えていた術です。もう少し時間をください」と怜が訴えた。
由良が隣のオハラを見るとオハラが引き受けた。
「霧が晴れれば我々の所在も衛星だけではなく肉眼でも簡単にバレる。火の術がなければいざというときに身を守る術がない。ハンターの数が少ない我々にはお前たちの術が必要不可欠。もう少し時間をやる。急ぐのだ」
「はい」怜と桃李は同時に答えた。
よかった。紫生は安堵して静かに息を吐いたがオハラが続けた。
「今日呼んだのはもう一つ重要な問題が起きたからだ」
途端にぎゅうっと捕まれたように心臓に痛みが走った。
「やっぱり殺されるのね」紫生がそう囁くと桃李が小声で答えた。
「何か問題があるとしたら俺たちだ。お前は関係ない。たまたま俺と一緒にいたから連れて来られただけだ。お前は帰してもらえる」
「一人で帰るなんていやよ」
「用があるのはお前だ、紫生」と由良がった。
「お前かよ!」「きみか!」桃李と怜がこちらを見た。
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