第3章 魔本家への召喚39 謎の女の正体
怜は新しくできた商業施設のビルの屋上にある芝生の広場に着くと辺りを見回した。するとオープンカフェテラスのテーブル席に座っていた女性が立ち上がり手を振った。
永井記念館で出会った長野蝶子だ。
「来てくれたのね」
永井記念館で会ったときよりもずっとメイクも服装も華やいだ雰囲気で、割と目立っていた。
「『待っている』っていきなりいわれたからね」
「随分そっけないいい方ね。でも来てくれたから嬉しい」
蝶子は魅力的な笑みを浮かべた。永井記念館で会った翌日、怜のSNSを通じて蝶子から連絡がきて以来、怜と蝶子はメッセージのやり取りをしていた。二人で会うのは今日が初めてだった。
「何で来てくれたの?」
「学長に僕たちのことを黙っていてくれただろ」
「ふふふ。もちろんあのこともね」
蝶子はふっくらとした唇に人差し指を当てた。
「何か、用事でもあったのかい?」
「会いたかっただけ。それだけじゃダメ?」
「いいや」
「そ。じゃあ、行きましょう」
蝶子はさっさと歩きだし、怜も黙ってその後に続いた。下のフロアに降りるとそこにはお洒落なカフェがいくつか入っていて蝶子はその一軒の前で立ち止まった。
「ここに入ってみたかったんだけど、いい?」
「いいよ」
黒いエプロンをした男性ウェイタに「二人」と蝶子が告げると、目立つ二人は通路に面したオープンエアの席に通された。テラス席でジュースを飲みながら秘境クラブや大学の授業のことを話してからお店を出て喧騒を逃れようと、落ち着いた雰囲気が漂うエリアに移動した。
「あなたと桃沢君、うちのキャンパスでも有名よ」
「そう?」
「ええ。二人に会ったってちょっと自慢しちゃった。ねえ、あのときお祓いしたって本当?」
怜と並んで歩きながら蝶子は質問した。
「ああ。そのあと何も出なくなったんだろ?」
「そうなのよ。あなたたちって何者? だって、これまでにも実は何度かこっそりその手の人たちを呼んでお祓いをしてもらったのに、一度もうまくいったことがないのよ。でもあなたちはあっさり成功させた」
「何者でもないさ。相性があるんじゃないかな」
「霊と霊能者の?」
「僕たちは霊能者ってわけではないんだけどね。まあ、たまたま上手くいっただけさ」
「控えめなのね。じゃあ、わたしたちの相性はどう?」
怜が驚いて隣を見ると、熱っぽい瞳でこちらを見ている蝶子と目が合った。
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