第2章 モモノフvs黒沢会38 再びの恐怖
桃李がガラス窓に駆け寄って周囲を見た。大勢の人が歩いているがリサの姿は見当たらない。すぐに紫生のところに戻ってくると
「いないぞ。見間違いだよ」
「いたわ。うちの制服を着てたもの」
そう答えた紫生の顔は真っ蒼になり震えが止まらない。
「大丈夫だよ。しっかりしろ」
桃李が紫生の肩を掴んだそのとき「どうしたの?」と後ろから美咲が声をかけた。桃李は振り返ると
「紫生がちょっと気分が悪くなったみたいなんだ。送っていくから悪いけど俺たちこれで帰るよ」
「え、じゃあ外のベンチにでも」
「いや、いいんだ。うちが近いから俺が連れて帰る。ごめん」
紫生は俯いたままで美咲の方にも顔を向けることなく桃李に抱き抱えられるようにして歩き出し、二人は美咲を残して出口に向かった。店内に一人残った美咲は黙ってそこにある雑貨をひたすら見つめた。
しかし内心は紫生への怒りで一杯だった。
わたしと桃沢君が仲がいいのを見て拗ねたのね。なんて幼稚な女。フンッ。あんな面倒くさい女、桃沢君も愛想つかすわ、きっと。
そう思って美咲は必死で留飲を下げた。
桃李が紫生を連れて店を出ようとインテリアコーナーから出口のある雑貨コーナーへ入るアンティークなドアを開けて続き部屋に入ると、所狭しと並んでいたはずの雑貨はどこにもなくそこはガランとした広い部屋であり、黒いスーツ姿の女性が一人直立してこちらを見ていた。綺麗に髪を結い上げ口を真一文字に結び無表情である。
「え? どういうこと? ここどこ?」紫生は気分が悪かったのも忘れて桃李を見た。女性を見ていた桃李が答えた。
「魔本家だ」
紫生は唖然として再度女性を見た。そういえば、以前魔本家で会った案内役の女性だった。
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『MAZOKU Journal #9
女同士というものは自分の属するグループ(会社、サークル、クラス)のイケメンがグループ外の女性に持っていかれるのをとても嫌がる。その女性が、容姿、学歴、社会的地位が自分より格下だと思っている相手ならなおさらだ。普段グループ内の仲が悪かろうがそのイケメンを巡るライバル関係にあろうが、外部の女性が現れたらその恋愛を阻止するためには一致団結するのだ。』
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