第2章 モモノフvs黒沢会37 ガラスの向こうにいたのは
美咲が行きたいというお店は、お洒落な洋服や、ギャラリーや、雑貨屋が並ぶ住宅街の裏通りにあった。シャビーシックな家具や雑貨が並ぶ店内で美咲が雑貨に気を取られている間に桃李と二人きりになると紫生は聞いた。
「スニーカ本当に買わなくてよかったの?」
「どっちかを選べば、どっちにも角が立つだろ?」
「え? それで選ばなかったの?」
「当たり前だろう。俺がこれまで女同士のバトルにどれだけ巻き込まれてきたと思っているんだよ」
そういえば、桃李は高二の三学期に紫生のクラスに転校してきたのだが、あまりにも中途半端な時期の転入だったのと、そのイケメンぶりゆえに、前の学校でクラス全員の女子と付き合ったために桃李を巡って刃傷沙汰が起きたせいで高校にいられなくなったからだという噂がまことしやかに流れたのを思い出した。
「だったらそもそも、廣田さんが一緒に帰ろうっていったときに断ってくれたらよかったのにぃ」
「断ったらかえって怪しまれるだろう。どうせ俺たちのこと探ってきてるに決まってるんだから。それに、あんなかわいい子に一緒に帰ろうっていわれて断る男はいないね」
怜のいったとおりの答えが返ってきた。
「じゃあ、廣田さんをうちに連れてくる気なの?」
「いや。母さんに女をうちに連れ込むなっていわれているからな。爺の血圧が上がっても困るし」
「ならよかった。家の中で鉢合わせでもしたら困るもの」
「そんな家の中で戦争起こすようなことする分けねえだろう。面倒くさいだけじゃねえか」
「戦争って、何それ?」
「だっておまえ、さっき美咲ちゃんに『つまんない』っていわれてカチンときて、いい返しただろ? 割と顔に出やすいタイプな上に負けん気が強いからな」
美咲ちゃん? いつから名前で呼ぶ関係になったのか。
「それは……まあね」
さすがに図星をつかれた紫生はいい返せずバツが悪いので、「あ、あっち見に行こうっと」とごまかしながらそのままインテリアが置いてあるコーナーへ その場を離れた。
「なんだ。珍しく素直に認めるのか?」
桃李が面白がって紫生の後についていった。雑貨が陳列してある棚の隙間から美咲はその様子をじっと睨みつけていた。
「違うわよ。あっちの雑貨が気になるだ…」
紫生がいきなり立ち止まったので後ろから来た桃李がぶつかった。
「あぶねえな。急に立ち止まるなよ」
しかし紫生は何もいわずガラス越しに店の外を見つめたまま動かない。
「どうしたんだよ?」さすがに桃李も心配になった。
「いま……リサがいた」
「え?」
「そこ。外をリサが立ってこっちを見てた」紫生は店の外の通りを指した。
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