第2章 モモノフvs黒沢会36 女の闘い3

「あ、あの…。高校でクラスも一緒だったしね。何パターンかは知ってるかも」


「へえ。桃沢君と家も近いの?」

「うん。結構田舎の方だから」


「桃沢君の家って、鳩ノ巣の旅館だよね?」

「そうなんだよ。ド田舎。名藤の家も割と近いんだ」


 桃李がさらっと答えた。


「へえ。あの辺、緑が多くて川も綺麗でいいとこよね。今度遊びにいってもいい? 案内して」


 おいおいおい。自宅に来るのは禁止だろうが。紫生は桃李が断ることを期待した。しかし


「ああ…いいけど」と桃李が答えた。

「やったぁ、嬉しい」


 燥ぎながら、チラッと横目で美咲が紫生の方を見たのが分かった。紫生の反応を試しているのだろう。勤めて平静を装ったが紫生は内心焦った。


 ちょっとお、案内って、まさかうちにくるんじゃないわよね?

 

 桃李が美咲を鳩ノ巣を案内するのは一向にかまわないが、家に来られるのは困る。何か勘づかれでもしたら後々厄介だ。


「ね、ねえ。桃李、スニーカどれにするの?」

 巴萌が助け舟を出してくれた。


「ああ。ちょっと考えるから今日は止めておくよ」

「そう。じゃあ、もう行こうよ」

「そうだな」


 巴萌に促されてお店を出ると、次は美咲が行きたいというお店に向かうことになった。ところが、ここで巴萌に山之井から連絡がきた。


「紫生、ごめん!」巴萌が顔の前で両手を合わせて謝った。「山ピーが、この前私から聞いたお店を教えてほしいっていうの。近いから、一緒に行くチャンスなの」

「もう~、私たち三人でお店に行くのぉ。でもまあ、いいよ。チャンスだから。行って。つぎ、ソフトプリンおごってもらうわよ」

「もちろんよ。じゃあね」


 巴萌は、桃李たちに手を振ると大慌てで山之井との待ち合わせ場所に向かっていった。


「なんだよ、巴萌。急にどこに行ったんだ?」

 桃李が聞いてきた。


「ちょっとね。友達からヘルプの急用が入ったらしいわ」

「へえ。じゃあ、俺らだけで行くか」


 結局、紫生、桃李と美咲の三人で次のお店に行くことになった。歩き始めてすぐ紫生は後悔した。


 しまったぁ。巴萌が帰るっていったときに「私も」っていえばよかった。


 桃李にベッタリくっついて歩いている美咲の後ろ姿を見ながら、うまく逃げる方法はないかと考えていた。

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