第2章 モモノフvs黒沢会35 女の闘い2

「うっるせえなあ。なんでそんなに驚くんだよ。当り前じゃねえか。黒沢怜だぞ」

 驚いたのは巴萌も美咲も同じだ。


「そりゃそうだけど……。誰? 誰なの?」

「知るかよ。あいつ秘密主義だからな」


 紫生と巴萌は顔を見合わせた。

 あの怜を急に呼び出せる女性がいるなんて、一体誰なのか。


 もちろん怜に好意を寄せる女の子はたくさんいるのだから、彼女がいても不思議ではないが、大学内にもそういう特別な関係にあるような女性はいそうにないし、怜自身からもそういう話を聞いたことがなかったので、衝撃は大きかった。


「怜様だから、そりゃ女の一人や二人や三人いても当たり前なんだけど…」


 巴萌がそう呟くと紫生も

「うん。だけど……なんか……意外」と答えた。


 二人の様子を見た桃李は、ふん、と鼻で笑った。


「あいつも生身の男だぜ。まあ、どうせ。十五人くらいいる女の中の一人じゃねえか。あいつに比べたら俺なんてクリーンなもんよ。おいっ! 聞いてんのか」


「どんな人だろう…」紫生には桃李の話は一切耳に入っていなかった。


 目的のビルに着いた桃李と女三人は、スニーカの置いてあるスポーツコーナへ直行した。


「この色どう思う?」

 桃李が、キャンパス生地のベージュのスニーカを指して紫生に聞いた。


「いいんじゃない? 何にでも合わせやすそうだし」

「そうか」


 桃李がベージュのスニーカを手に取ろうとすると美咲が

「色が無難すぎてつまんないわ。桃沢君は華があるから、この赤で遊んでみてもいいんじゃない?」と同じブランドの色違いの赤を指していった。


 つまんないですって? 


 美咲の発言にカチン! ときた紫生がチラッと彼女を見ると、紫生の反応を最初から分かっていたかのように不自然なまでに美咲はこちらを見ようとしない代わりに明らかに目の端で紫生を捉えていてその横顔からも勝ち誇っているのが分かった。


 なにこの女、ムカつくぅ~。


 紫生がムッとしているのに気づかない桃李は、二色のスニーカを目の前にして、胸の前で腕を組んでいたが、赤いスニーカを手に取って足元に置き、履いてみた。


「似合う~」と美咲ははしゃいで見せた。

「どう?」と桃李は紫生にも聞いた。


「それもいいけど、桃李が持ってる服に合わせると色が喧嘩するかもね。桃李の服に合わせやすいのは、アースカラーじゃないかしら?」


 紫生も負けじといい返すと、美咲の眉毛がピクッと動いた。美咲は桃李が何色の服まで持っているかまでは知らないだろう。


 一緒に住んでるから桃李の持ち物は全部知ってるもんねぇ~。


「名藤さん、桃沢君の持ちものに詳しいのね」


 美咲が意地悪そうな目で聞いてきたので、紫生はハッと我に返った。

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