第2章 モモノフvs黒沢会33 そして火蓋は切って落とされた
モモノフの中には抜け駆けをしないという暗黙のルールがあると聞くが、ほかの女子学生もさすがに美咲にはかなわないと思うのか、それとも美咲に持っていかれるのは仕方がないと思っているのか分からないが、美咲には一目置いているようだった。
紫生と巴萌も何度か共通の友人を介して話をしたことがあったので、二人は愛想笑いで美咲を受け入れた。どうせ向こうは桃李とよく一緒にいる自分に関心があって近づいてきたのだろうとは思っているが、表面上はたまに目が合うと立ち話はする仲だ。
「おう」
桃李が答えたので、紫生は驚いた。いつのまにやら美咲と知り合いになっていたらしい。二人は学部も違うし接点はないはずだが。
「桃沢君、この前借りたCD、返すね。はいっ」
飛び切りの笑顔で美咲は桃李に洋楽のCDを両手で差し出した。よく見ると亜羽のだ。
「ああ、ありがと。どうだった?」
「最高! また別の貸して」
「だろ? また貸すよ」
よくいうわ。洋楽なんてほとんど聞かないくせに。格好つけちゃって。紫生は腹の中で笑った。
「もう帰るの?」美咲が聞いた。
「うん。こいつらが、これ食べ終えたら」
桃李は紫生と巴萌の食べかけてのソフトプリンを指した。
ちょっ! そんなこといわないでよ。さっさとモモノフと一緒に帰れ!
紫生は冷や汗をかいた。
「じゃあ、一緒に駅まで行かない?」
冗談でしょ! 紫生は咄嗟に
「どうぞ。先に行って。私と巴萌はまだ時間かかるから」
と桃李を追い払う作戦に出た。
「あん? もうちょっとじゃん。いいよ、待ってやるよ」
「今日は、帰りに買物がてらぶらぶらして帰るつもりなのよ」
「じゃあ、俺も行くわ。ちょうどスニーカ見たかったんだ。見てくれよ」
「私、選んであげる!」
すかさず美咲がいった。
うわっ! 最悪。
ソフトプリンを食べ終えると席を立った。桃李を追い払う作戦が裏目に出て、結局みんなで一緒に買物に行くことになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます