第2章 モモノフvs黒沢会28 交換条件2
「そう。『心霊ハンタ』はいま私が考えたネーミングだけどね。いずれにしても、悪い話じゃないでしょ?
けど、黒沢君が、彼女と特別な関係にあったのなら、浄霊をするのは難しいだろうと思って、それで色々聞いたの。
どうする? この話はわたししか知らないから、断るのも自由よ。サークルの公認をもらう方法はほかに考えればいいだけだから。
そもそも、出来たばかりの小さいサークルに予算と部室がもらえるなんて滅多にないみたい」
「浄霊に成功したら、本当に大学公認心霊ハンタとして認めてもらって、サークルも公認してもらえるんですよね? 予算と部室がもらえて」
怜は念を押した。
「私が交渉したんだから、間違いないわ」
カレンは自信ありげに頷いた。
一瞬考えたのち怜は「やります」と答えた。
「おい、怜」
驚いて止めようとする桃李に怜は反論した。
「いいじゃないか。僕たちにとって悪い話じゃない。死人が生き返るはずがないし、万が一、心霊現象が起きているなら浄霊すればいいだけだ。それでサークルの公認がもらえるなら楽なもんだろう」
「でも……」
「お前が嫌なら、僕が一人でやる」
「分かったよ」
怜の決意の固さを知り、桃李もそれ以上は止めようとはしなかった。
「ほんとうにいいの?」
「もしリサの霊がいるなら、成仏させたいとおもいます」怜は答えた。
「そう。では決まりね。夏川さんかどうかはともかく、心霊現象があるなら浄霊して、なければそれでよし。ただその場合は噂の出所くらいは掴んでほしいわね。成果物が必要よ。期待しているわよ」
「はい。交渉してくださってありがとうございます」
怜がお礼をいうとカレンは、微笑んだ。
「いいのよ。公認が取れなくて、わたしも何とかできないかって考えていたところだったの。話はちょっと変わるけど、私が参加してるボランティア団体で子供の貧困をサポートしているんだけど、よかったらそのサポートも来ない?
ボランティアはかなり有利に働くわ。サークルのメンバで誰か興味のある子いないかしら。出来ることは何でもやらなくちゃ」
「メンバに声かけてみます」怜が答えた。
「お願いね。でもすごいわね。あなたたちそんなに霊感があって、しかも浄霊までできるなんて。そういう家系なの?」
「はい。実は僕と桃沢君の家は遠い親戚でして、先祖が神事を司る仕事をしていたようなんです」
咄嗟に怜はそう説明した。
「へえ。浄霊って、どうやるの? カソリックだとエクソシストがいるけど」
「まあ。そんな感じです。念力みたいなもので。でも大袈裟なパフォーマンスは全くありません」
桃李は適当に人差し指と中指を立ててをそれっぽく下から上に空を切って見せた。もちろんでたらめである。
「へえ。世の中まだまだ不思議なことがあるものね。ひとまず一週間後に一旦報告してちょうだい」
「分りました」
二人がドアに向かって歩いていると、背後からカレンが質問を投げかけた。
「黒沢君、学長の姪に何したの?」
怜が驚いて振り返ると、チャーミングな笑みを浮かべてこちらを見ているカレンと目が合った。
「いえ、あの」
答えを準備してなかった怜は、一瞬後れを取った。
「オッケー。察しはついた。いいのよ別に。浄霊お願いね」
カレンはそういってまた、パソコン画面に向かって作業に没頭し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます