第2章 モモノフvs黒沢会27 交換条件1

「浄霊の依頼……ですか」

「そう。『死者の書』って知ってる?」


 思わぬ質問に二人は固まり、一呼吸置いてから「はい」とだけ答えた。


「じゃあ、話は早いわ。やっぱり学内でもかなり噂になっているのね。中でも生き返ったといわれているのが、うちの高等部時代に亡くなった女子生徒の夏川リサって子らしいの。知っているでしょ? 高等部時代のあなたたちの同級生」


「はい。僕は同じクラスでしたから」怜は答えた。


「らしいわね。学長からこの話を聞いて、少しわたしなりに調べさせてもらったわ。夏川さんはとても才色兼備な女子生徒だったそうね」

「はい」


「黒沢君と彼女は学内でベストカップルといわれて有名だったそうだけど、それは本当?」

「僕が生徒会長で、彼女は副会長でしたから。一緒にいることは頻繁にありました」


「彼女とは本当にそういう……親しい間柄だったの?」

「周りから、僕と彼女が親しい間柄だと思われていたのは知っています」


「あなたらしい答え方ね。それはつまり、あなたは彼女に対して特別な感情を抱いていなかった?」

「はい」


「でも、夏川さんの方は?」

「それは……分りません」


「そうね。彼女が亡くなった理由は?」

「彼女の死因は、何らかの大型の害獣に襲われたことによる外傷性出血性ショックだと聞いています。未だに犯人は分りません」


「わたしが調べた内容と同じね。ごめんなさいね。ツッコんだことをいろいろ聞いて」

「いいえ。同じ高校から来た連中なら誰もが知っていることなんで」


「その夏川リサさんの浄霊をお願いしたいというのが学長の依頼よ。こういう噂は大学にとってマイナスイメージだから、学長は気にしていらっしゃるみたい。

 建物も古いし歴史もあるから、その手の噂なんていくらでもあるみたいだけど、さすがに在校生が生き返ったという噂はよくないと判断したみたい」


「ドクタ・カレン。お言葉ですが、それは噂であって人が生き返るはずなんてないですから浄霊しようにもできないと思います。心霊現象とは違います」

 怜は率直にそう答えた。


「もちろん、私だってわかっているわよ。人が生き返るなんて、バカバカしい。学長だってわかっているはずよ」

「え、じゃあ何で?」

 桃李が戸惑いながら聞いた。


「公認とれなかったでしょ? サークルの」

「ああ、はい」怜が答えた。


「生き返っているわけではないと思うけど、心霊現象が起きているかもしれないでしょ。だからこっそり浄霊してほしいそうなの。そこで」カレンはここで間を置き身を乗り出した。「もし夏川リサの浄霊に成功したら、サークルの公認をしてもらえるように交渉したの」


 えっ、と怜と桃李は短い声を発した。


「浄霊に成功したら大学公認心霊ハンタとして公共性を認めて、サークルも公認してくれるそうよ」

「心霊ハンタ?」

「大学公認?」


 二人は眉をひそめて聞き返した。

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