第1章 空想少女9 僕が殺した1
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『ハロハロハロー! みんな準備は出来てる?
今日は特別号よ。Mが秘境クラブに入ることになり、早速Rと二人で出掛けることに。その目的は第二キャンパスに起こるという超常現象を探るため。by MUU』
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となり町にある第二キャンパスへは、怜の運転するポルシェで向かった。
「結局、俺とお前かよ」
桃李は助手席に座って窓の外を見ながらぼやいた。
「急だったからな。でも二人なら人に見られず狩りができるから返って好都合だ」
ハンドルを握って前を見たまま怜が答えた。
「それはそうだけど。お前にしては今日行くなんて急だなと思って。ドクタ・カレンにウィンクされて動転したか?」
「それはない」
「いーや。お前が動揺したのを俺は見逃さなかったね。割とお前の好みだと思う。ああいうクール・ビューティは」
「違うね。ドクタ・カレンの美貌に目がくらんでいるのは、お前の方だよ」
「全然! この車、飛翔の?」
桃李は話題を変えた。飛翔というのは、怜の兄だ。
「ああ。貸してもらった」
「へえ。帰りに俺に運転させてくれよ」
「いいけど、傷でも付けたら飛翔に殺されるぞ」
「大丈夫だって。ところで、これから見に行くのはオノボだっけ? 何かのスピリットかな」
「うん。まだ行ってみないと分からないな。そもそも嘘かもしれないし」
それからしばらくの間、車内は静まり返り、ポルシェの心地よいリズミカルなエンジン音だけが車内に響いていた。沈黙を破ったのは怜だった。
「リサが復活したって話、どう思う?」
「……」
桃李はすぐには答えなかったが、怜と同じくフロントガラスの向こうを見たまま答えた。
「あるわけねーよ。他人の空似だろう。それか、誰かの質の悪い悪戯か」
「誰がそんな悪戯をする?」
「さあ。世の中おかしな奴がいっぱいいるからな。なんだよ。まさかお前まで死人が復活するなんて思ってないよな? お前、見たんだろう? リサの死体」
少し沈黙したのち、相変わらず前を向いたまま怜は答えた。
「見たよ。親子三人、間違いなく死んだ。僕が殺したんだから、間違いない」
「怜っ!」
桃李は声を荒げて運転席の怜を見た。怜は何も答えず急にハンドルを切ってポルシェを止めると桃李をじっと見つめ返した。
「何だよ?」桃李が聞いた。
「着いたぞ」
「へ? ここどこだ?」
桃李が窓から周囲を見まわすと、そこは普通の住宅街の中にあるパーキングで、キャンパスは見当たらなかった。
「許可証がないから二キャンの中に車は止められないんだ。ここから歩く。準備しろ」
「ああ、そうか」
車から降りてキャンパスに向かって歩き始めると、閑静な住宅街の中に延々と続く塀に囲まれた森が現れ、塀づたいにしばらく歩くと正面入口があり、門柱には「Z大学 第二キャンパス」と看板が掛かっていた。通用門から中に入ってすぐ右手の森の木立を抜けたうっそうとした場所に、永井記念館はひっそりと建っていた。レンガ造りの洋風の建物で、正面玄関横に「鏡の世界の不思議展 公開中」という看板が立っていた。
エントランスロビーに入ると中は薄暗く、しんと静まりかえっていて、客は一人も見当たらない。入ってすぐの右手に事務室兼チケット売り場があり、窓口には誰も坐っていない。窓口の隣の案内ボードにいろんなチラシが貼ってあり、ざっと見るとこの建物はパーティ会場や記念写真の撮影の場としても貸し出されているようだ。
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