第9話

「うぅ、駿くんがぁ、しゅんくんがぁぁ!」

「はいはいごめんって、間違えて手を滑らせちゃったんだよ」


いじけて地面に顔を向け泣いてる桜花を宥める駿、結果的に言えばあの作戦はめちゃくちゃ上手くいった。そして桜花が泣きじゃくるという今の現状になっている


(う〜ん、桜花が落ち込むのは目に見えていたことだがまさか泣くとは....めんどくせぇ)


「酷いよ駿君!駿君には人の心はないの!?お母さんのお腹に置いてきちゃったの?」

「はは、中々ひでぇことを言いますな。俺は賢明な判断だと思ってるけど」

「賢明!?あれが?あまりにも残酷だよ〜」

「いや、手を思いっ切り食われてたじゃないですか桜花さん。てか、ウサギが毒を持ってるかもしれないのに俺はそこで呆然と見ていろと...」

「...あ、うん。そうだよね駿君は私のことを心配してくれて行動してくれたんだよね。ウサギを殺しちゃったのは許しかねないけどごめんね」

「──そうだよ、まったく俺はものすごく心配してたんだからね キリッ(嘘)」

「駿君!!そんなにも私のことを想ってくれたなんて!」

「わぉ、チョロ」(ボソッ)

「?なにかいった?」

「いや何も?」


心にも無いことを言う駿に対し、それを真に受け感動する桜花


(桜花さんチョロインだな〜、悪い男に騙されなきゃいいけど)


「まぁ兎にも角にも無事(?)ウサギという食料が手に入ったし、しばらく味ある生活になるんじゃない?」

「そうだね!木の実から開放される...なんて幸せなの」

「あ、ウサギのことはもういいのね」

「?ウサギ?なんのこと」

「あ、いえなんでもないです」

(忘れるのはや!ウサギあれだけ可愛がって泣いてたのに。いや、でも忘れててくれた方が楽だな、桜花また泣きそうだし)

「じゃあ帰ろ!駿君」

「そうだね帰ろうか。いや〜それにしても肉もゲットしたし、終わりよれば全てよし、だな」

「肉?あ、」

「ん?どしたん」

「ウサギさん、食べるんだった」

「あ、───さぁ桜花!家に帰ろうか!!やっぱり我が家が一番だろ?ははっ」


桜花がウサギのことを思い出し慌てふためく駿

急いで帰らそうした駿に対し桜花はまた泣きじゃくるのであった───




「キャーッ美味しいこのお肉!どれだけ食べても飽きない!駿君また捕まえに行きましょ!」

「はぁ、それは良かったですねー」


あれだけ泣いてウサギを料理していた桜花だがいざ食べると肉の美味しさにウサギに流した涙を歓喜の声に変え、大はしゃぎとなった


「さっきまではわんわんと泣いてたくせに」ボソ


さっきまでの苦労を返せと言わんばかりに小声で

悪態つける駿

それに気づかず満面の笑みでウサギ肉を食べる桜花


「駿君、お肉無くなっちゃうよ?食べないの?」

「誰のせいだと...いやなんでもない。いただこう」


文句に飽きた駿はうまいうまいと肉を頬張るのであった




∀∀∀∀∀∀


───暗い夜の森、夜行性の多い魔物が蔓延る中でひっそりと木の影に横たわる少女がいた

「助けてお母、さん。助けて、お父、さん


助けて───神様───」


弱々しい声で助けを求める少女。しかし、その声は誰にも届かず夜の空へ消えていく───

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