10・黒龍


 次に見つかった龍は、黒龍だった。

 黒龍が潜む山の近くの集落が毒に犯され、集落の人間たちが苦しんでるという知らせを受け、俺たち勇者パーティーはさっそく現地へ向かう。

 王国からの支援物資を乗せ、フィオーレ姉さん以外の薬師も同行させて集落に向かうと、それはヒドい状況だった。


 「ひ、ひっでぇ………」

 

 到着した俺は、その状況に顔をしかめた。

 集落の人間の殆どが寝込み、やつれてる。しかも動く気力もないのか、全員が寝込んだままだ。

 それに何人かは既に死んでる……これはヒドすぎる。

 この状況で1番活躍したのは、フィオーレ姉さんだった。


 「手分けして解毒の準備を!! ショウコちゃん、集落全体を盾で覆ってちょうだい!! 少しでも外気の毒の侵入を防いで!!」

 「は、はいっ!! 盾よ、広がって覆えっ!!」

 

 ショウコの盾が広がり、集落を覆う。

 同行した薬師とフィオーレ姉さんたちが慌ただしく動き始め、フィオーレ姉さんが俺たちにも指示を出す。


 「アークくん、残酷な事を言うわ……黒龍は、貴方1人で倒してほしいの……」

 「ふぃ、フィオーレ姉さん!? アタシたちは!?」

 「そうですよ、どうでしたんですか!?」

 「フィオねぇっ!?」


 そりゃ驚く。俺も驚いてる。


 「いい、黒龍は毒を操る龍よ。空気感染でこれだけの規模の被害が出てる。直接龍のブレスに触れたら、黄金のオーラを持たないシャオちゃんたちじゃ解毒の間もなく死ぬかもしれない……」

 「わかった、俺が行く」


 それだけで、俺の決意は固まった。

 シャオやローラ、ファノンを死なせてたまるかよ。シャオとはまだ1回しかシてないし、ローラやファノンだってまだだ。

 シャオは龍を退治するごとに1回する約束をした。ローラたちは魔王を討伐してから、それまではシャオのみ抱くことを許して貰った。

 つまり、黒龍を倒したら……シャオとできる!!


 「シャオたちはフィオーレ姉さんの手伝いを、俺が黒龍を始末する」

 「アーク……」

 「兄さん、気をつけて」

 「アークぅ……」


 俺は首をコキコキ鳴らし、準備運動をする。

 

 「アークくん、黒龍の牙を回収してきて。恐らく牙を使えば解毒は完全に出来るはず……お願いね」

 「わかった。じゃあ消し飛ばさないで首をぶった切るよ」



 そう言って、俺は黒龍が潜む山に向かった。


 

 **********************

 


 「………いた」


 山の山頂に、黒龍はいた。

 口からは黒い煙がモクモクと吐き出され、どうやらあれが風に乗って集落に降り注いでいるんだろう。一刻も早く倒さないといけない。


 「行くか……ッ!!」


 俺は気合いを込め、黄金のオーラを全身に纏う。

 黒龍の前に飛び出し、聖剣に黄金のオーラを纏わせた。


 「おいコラ黒トカゲッ!! テメーはここでぶった切る!!」

 『ブファァァァァァッ!!』


 口から黒煙が吐き出され俺を包む……が、黄金のオーラの前には無力。

 俺は聖剣を振り、煙を吹き飛ばした。


 「クッセーーーんだよっ!! こんのボケがぁぁぁぁぁぁッ!!」


 高速で接近し、首を一太刀で切断した。

 黒龍の身体は崩れ落ち、そのまま絶命した。


 「確か、牙……」


 聖剣で牙を全部切り落とし、身体と残りの頭は黄金のオーラで消し飛ばす。

 これで毒の大本は断った。あとは牙をフィオーレ姉さんに渡して完全に解毒すれば終わりだ。



 俺は急いで集落に帰還した。



 **********************



 「フィオーレ姉さんっ!!」

 「アークくん!? 速いわね……って、そんなことより牙は」

 「あるよ、これっ!!」


 俺はフィオーレ姉さんに牙を渡すと、フィオーレ姉さんと薬師たちはさっそく解毒剤の準備に取りかかる。

 俺はそのままシャオたちの手伝いをした。

 シャオと一緒に洗濯したり、ローラと食べやすく栄養ある雑炊を作ったり、ファノンと重傷者の看病をしたり、ショウコをねぎらい飲み物を運んだり、ナルフェと家畜の看病をしたりと、数日かけて集落の世話をした。

 そのおかげで、一週間ほどで人々は元気を取り戻し始めた。

 

 「とりあえず、あとは薬師たちに任せて帰還しよう」

 「そうね。それに……」

 「へへへ、城に帰ったら……」

 「わかってる。アークは頑張ったもんね」

 「俺だけじゃなくて、みんなだろ?」

 「そうね……」


 シャオと約束し、城へ帰る。

 今回は流石に疲れたのか、城に到着するなり解散となるが、ショウコが俺を呼び止める。


 「あ、アーク、ちょっといいかな」

 「どうした、ショウコ」

 「うん。あの………ゴメン、やっぱ今はいい」

 「……?」


 よくわからないが、何かを伝えようとしてた。

 少し思い詰めてたようにも感じたが、ショウコは行ってしまった。

 その日の夜、シャオの部屋で風呂に入り、一緒のベッドに潜りつつ聞いた。


 「なぁ、ショウコのことだけど」

 「ショウコ? 何かあったの?」

 「いや、何か思い詰めてるような……」

 「そう? ショウコもこっちに来て半年は経つし、だいぶ打ち解けたけど……」

 「う~ん、帰りたいとかかな?」


 俺はショウコを帰すと約束したので、帰るためにどうすればいいかナルフェに聞いたが、勇者の力でも難しいそうだ。可能性があるとすれば、この世界とショウコの世界に穴を開け繋げば、ショウコは帰れるそうだが、それを行うための魔術がないそうだ。

 ショウコを連れて来ることは出来た。だがこちらからショウコを送ることは難しい。

 だが、諦めるワケにはいかない。ショウコのためにも。


 「アーク、アタシたちもいるから……抱えすぎないでね」

 「ありがとな、シャオ……」

 「あ、ん……」


 俺はシャオの乳房に手を伸ばし、優しく愛撫する。

 シャオの抵抗がなくなり、俺を受け入れる準備が出来上がる。



 今夜も、長くなりそうだ。

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