9・2人と1つ


 俺は1人、大地を駆けていた。

 黄金のオーラを纏い、黄龍が住む岩山地帯をたった1人で駆け抜ける。

 今回は俺1人、というか情報が入った瞬間に王国を飛び出した。


 そんなことをする理由は当然ある。

 全ては俺の勝手な都合だ。俺自身の欲望が俺を突き動かす。

 

 目的地の岩山地帯に到着し、全身を黄金が包んだ状態で岩場を進む。

 そしてついに見つけた。黄色いトカゲのような黄龍。

 俺はアンフィスバエナを抜き、黄龍が俺に気が付くと同時に、俺は黄色いトカゲを縦に両断した。

 

 「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! 終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 すぐに王国へ帰還するために、来た道を引き返す。

 帰ったら………シャオが俺を待っている。

 シャオは言った。俺の欲望を刺激する言葉を。



 『アンタ、ファノンに手ぇ出してないわよね……』

 『あ、当たり前……です。はい……』

 『………ハァ、もう……わかったわよ』

 『へ?』

 『その、アンタも辛いのよね。うん……じゃあ、次、次の龍を倒したらね』

 『な、なにを……何をしてくれるんだ?』



 『その……次の龍を倒したら、してもいいわ』



 これまでの会話を思い出しながら、俺は全力で帰還した。



 **********************



 「ただいまーーーッ!! 今帰っぶっへぁぁぁぁぁぁっ!?」


 城の自室に帰った俺は、待ち構えていたシャオにぶん殴られた。

 床を転がり、理不尽な暴力に文句でも言おうと顔を上げると、鬼神の如く怒りを露わにした6人の少女が俺を見下ろしていた。


 「あ、あの……」

 「お帰りアーク。ぶっ殺す」

 「兄さん。お帰りなさい。死ね」

 「アーク、ばか」

 「アークくん。私たち、すっごく怒ってますよ?」

 「アーク……ほんとバカね」

 「こればかりは擁護できません。一度痛い目に遭えばいいかと」


 あー……これはやっちゃいましたか。

 まぁ、居場所がわかった途端に、食料も持たずに飛び出したからな。それくらいさっさと終わらせたかったし、シャオを抱きたい気持ちが強かった。


 「も、申し訳ありません。軽率でした……」

 「兄さん。どうして1人で飛び出したのですか? それも場所を聞くなり準備もせず……納得出来る説明をして頂けますよね?」

 「え? それは……」


 俺はシャオを見る。するとシャオの顔が赤くなり、誤魔化すように俺の頭にゲンコツを落とした。

 どうやら俺が飛び出した理由を正確に理解してるようだ。


 「アークくん。理由はどうであれ、アークくんはみんなに心配を掛けました。ちゃーんと謝って下さい」

 「は、はい。フィオーレ姉さん……その、申し訳ありませんでした。もう二度と勝手なマネをしません」

 「はい。ではこの話はここまで。アークくん、黄龍は倒したんですか?」

 「うん。塵も残さないぐらい全力で屠った」

 

 フィオーレ姉さんが纏めてくれたおかげで何とか収まった。

 後でちゃんと礼をしよう。たぶん、フィオーレ姉さんじゃなきゃこういう諍いは止められない。みんなのことをよく知ってるからな。

 

 とりあえず、今日は解散になった。

 次の龍が見つかるまで待機。と言っても戦ったのは俺だけだから、みんなは休暇続行だ。



 とりあえず……これからのことを考えよう。



 **********************



 俺は1人、自室の床で精神統一をしていた。

 なんだかんだで龍は倒した。シャオの性格なら、きっと約束は守る。

 こういう場合、風呂はいつ入ればいいんだろうか? 先に入って待ってるべきなのか? それとも一緒に入るべきなのか? わからん……よし、一緒に入ろう。そっちのが俺もシャオも嬉しい。シャオは知らんが。

 

 「来た!!」


 ドアがノックされた。

 俺は興奮を抑えきれず、急ぎ足でドアへ向かう。そして勢いよくドアを開け、シャオの手を掴んで部屋に引きずり込んだ。


 「待ってた……もう……………あれ?」


 めっちゃ柔らかい。フワッフワだ。シャオってこんなに胸が………あ。


 「あ、アークくん? その……」

 「………」


 フィオーレ姉さんだった。そんなアホな。


 「ごめんね。シャオちゃんじゃなくて。約束だったんだよね」

 「い、いや……あはは」

 

 フィオーレ姉さんはお茶を煎れ、クッキーを出してくれた。

 すると今度はローラの部屋に繋がるドアがノックされ、返事をする前にローラが入ってきた。


 「ろ、ローラ? どうした?」

 「………」

 「うふふ、私が呼んだの」


 ローラの顔は赤い。しかも手にはバスタオルを持ってる。

 ワケもわからず首をかしげると、フィオーレ姉さんがあっさりと言った。



 「うふふ、昔みたいに、一緒にお風呂入りましょうか」



 **********************



 「ほらアークくん、ちゃんと立って」

 「………」

 「………うう」

 「ローラちゃんも、昔は一緒に入ったじゃない」

 「そ、それは昔の話です!!」


 現在、俺は洗い場で身体を洗われています。

 ローラはガッチリタオルを巻いているが、フィオーレ姉さんは腰にしかタオルを巻いてない。6人の中で1番大きいであろう巨乳を、惜しげもなく晒してる。

 恥ずかしくないのだろうか。するとフィオーレ姉さんは、「昔は一緒に入ったから平気。変わったのは身体くらいで、心は昔のままよ?」なーんて言った。その身体が問題なんじゃないでしょうか?


 「アークくん、おっきいわね~」

 「………」

 「………」


 フィオーレ姉さん以外は無言だ。

 俺は腰にタオルを巻いているが、かなりヤバい。頭の中で黄色いトカゲを思い出しつつ、無心を保つ…………ムリでーす。


 「ほら座って、頭を洗うから」

 「………」

 

 俺は桶に座り、頭をわしわし洗われる。

 頭を洗い終え、そのまま湯船に飛び込み、ローラたちが身体を洗うまで青龍の姿を思い出して気持ちを………落ち着くか!!


 「失礼します……」

 「隣、ゴメンね」


 そんな下らないことを考えていたら、2人が来た。

 暫く無言で湯船に浸かるが、フィオーレ姉さんが話しかけてきた。


 「シャオちゃんとファノンちゃん……嬉しそうだったわ」


 来たか。

 たぶん、そのことだと思ってた。

 俺の答えはもう決まってるし、答えを言うだけだ。


 「ローラ、フィオーレ姉さん……俺、2人を」

 「アークくん、ずっと好きでした。小さな頃からずっと……」

 「え」


 フィオーレ姉さんが、俺に向かって言った。


 「うふふ。先に言っちゃった……」

 「あ、いや……はは、ズルいや、フィオーレ姉さん………」

 「ほら、ローラちゃんも」

 「うぅ………に、兄さん……私、ずっと兄さんのことが……」

 「好きだローラ!! 愛してる!!」

 「え」


 フィオーレ姉さんはともかく、義妹に負けてたまるかよ。

 俺は目をパチパチさせてるローラの手を掴み、ローラを無理矢理立たせ俺も立ち上がる。フィオーレ姉さんも立ち上がり、俺の言葉を聞いた。


 「ずっと好きだった。シャオもファノンも、ローラもフィオーレ姉さんも、みんな大好きだ!! だから、魔王を倒したら結婚してくれ!! 全員を嫁にする!!」

 「はい。私フィオーレは、アークくんのお嫁さんになります」

 「わ、私ローラもです!!」

 「よっしゃ!!」


 タオルが落ちて素っ裸だが、そんなのどうでもいいくらい嬉しかった。

 夢に向かって、俺は間違いなく進んでる。


 「わぁ……」

 「こ、これが兄さんの……」

 「おぉ、2人ともスゴいボディだな」

 

 たまらん、ここで襲いたいが……最初は決まってる。

 

 「私たちはここまで。最初はシャオちゃんに、ね」

 「兄さん。頑張って下さいね」

 「え?」


 フィオーレ姉さんが、イタズラっぽく微笑む。


 「部屋で、シャオちゃんが待ってるわよ」



 その言葉を聞いて、俺は風呂場を飛び出した。



 **********************



 腰にタオルだけを巻いて、俺はシャオの部屋に飛び込んだ。


 「シャオ……」

 「アーク……遅いっての」

 「わ、悪い……」


 シャオは風呂上がりなのか、バスローブ姿でベッドに腰掛けてた。

 俺は吸い込まれるようにその隣に。拒否は一切なかった。


 「……で、みんなに告白は済んだんでしょ?」

 「……ああ。みんな受けてくれた」

 「そっか。じゃあアタシが正妻かな?」

 「かもな、へへへ……」

 「あはは、その……約束だもんね」

 「イヤか?」

 「ううん、なんか嬉しい」


 俺とシャオはキスをした。

 徐々にキスは深くなり、2人でベッドに倒れ込む。



 この日、俺とシャオは1つに繋がった。

 

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