7・シャオとお風呂


 王国へ帰還した俺たちは、陛下へ赤流討伐を報告し、次の龍が見つかるまでは休暇となった。

 疲れもあったので今日は城へ泊まり、明日は家に帰ってのんびりすることに。

 ナルフェも休暇を貰ったので、ショウコと一緒にシャオの家で過ごす予定らしい。仲が良くていいですね。


 そして俺は、大事な約束を果たすつもりだ。


 城へ帰還した夜。みんな疲れていたので部屋に戻り身体を休めている。俺は隣のシャオの部屋をノックした。


 「はいはーい。あれ、どうしたのアーク」

 「ああ、大事な用事を忘れてな」

 「用事? なんかあったっけ?」


 おいおい、勘弁してくれよ。俺は忘れてないぜ?

 首を傾げるシャオを置いて、俺は部屋に入ってカギを締める。


 「決まってるだろ、一緒に風呂に入るんだよ」



 俺は完全に調子に乗っていた。



 ********************



 さすが城なだけあって浴室は豪華だ。

 湯船は大理石で出来ていて、シャワーユニットは黄金に輝いてる。それに壁には壁画が描かれ、美しさを更に強調してる。


 「い、言っておくけど、ヘンなことしたら斬り落とすからね」

 「わ、わかってるよ」


 俺とシャオは、タオルを巻いて浴室にいた。

 シャオは律儀だから約束は必ず守る。だが、タオルなしという約束は守られていない。

 

 「ふぅ、ほらアーク、背中流してあげる」

 「あ、あぁ」


 シャオと一緒に洗い場へ。

 背中をシャオに向けると、シャオはシャワーのお湯を当てて来た。そしてそのままスポンジを泡立てて洗い始める。


 「······大っきくなったわねぇ」

 「え⁉」


 マズい、確かに大きくなってる。

 後ろには裸のシャオが居ると考えただけで、こんなに膨張するとは思わなかったんだ。しかもシャオにバレてるだと⁉


 「背中。鍛えられてる」

 「·········うん、まぁ」


 あぶねー早とちりか。

 自爆したらヤバかった。切り落とされてメスになるところだ。

 シャオはワッシャワッシャと背中を洗い、俺にスポンジを手渡す。


 「おしまい。前は自分でね」

 「お、おお」


 俺は身体を洗い、泡を落とす。

 すると後ろからシャオの声が聞こえる。


 「ほら、湯船に行ってなさいよ。それと、アタシも身体を洗うから、こっち見ないでね」

 「·········」

 

 見たい。超見たい。

 だけどダメだ。ここで見たら嫌われる。

 俺は前かがみで湯船に向かい、無心でお湯に浸かる。

 そのまましばらく湯を満喫していると、タオルを巻き直したシャオが入って来た。


 「ホントに見なかったわね。偉い偉い」

 「う、うるさいな」


 距離は1メートルほどだろうか、手を伸ばしても少し届かない距離だ。緊張はするが、しばらく湯を堪能する。

 少しのぼせて来たのか、俺は確認を込めてシャオに言う。


 「あのさ、シャオ」

 「······なに?」

 「魔王を倒したら、結婚してくれ」

 「······いいよ」


 距離が少し、近くなる。

 手を伸ばせば届く距離。俺とシャオは少しづつ寄る。


 「へへ、結婚式は盛大にやろうぜ。それこそ、勇者と勇者の仲間の結婚式だ。王国を挙げて式を行うのもいいな」

 「それはさすがに恥ずかしいわよ······」

 「ダメだ。よーし、じゃあ陛下に頼んでみよう」

 「······もう、気が早いわよ」

 

 距離は、肩が触れ合うくらい近い。

 俺はシャオの肩に手を回し、そっと抱き寄せる。

 

 「シャオ······」

 「アーク······」


 シャオが目を閉じる。

 俺はゆっくりと顔を近付け、その唇を頂いた。


 「ん······」

 

 ほんの数秒だろうか、シャオとキスした。

 初めてのキスに、初めての混浴。俺の欲はムクムクとせり上がる。


 「この先は、結婚してから······ね」

 「う、うぐぅ······ん」


 なんとか耐えた。

 シャオのイタズラっぽい笑みは、この状況では逆効果だ。

 思春期の、しかも好きな婚約者の裸を見たい触りたい欲望は、龍なんかよりよっぽど手強い。


 「じゃあ、アタシが先に上がるから」

 「うん······」


 シャオは湯船から上がり、出口に向かう。

 なんとか耐えたけど、一部はかなり大きくなっている。このままじゃ寝れないな。

  

 「アーク」

 「ん?」


 シャオに呼ばれて顔を上げる。


 「ほら、サービス」


 パラリと、シャオはタオルを外して裸体を晒した。

 白くやや赤みの差した色っぽい肌、ぷるんと膨らんだ乳房、引き締まったウエスト、スラリと長く細い足、全てを俺に晒した。

 胸の先端も、見えてはいけない場所も全てを。

 時間にして5秒ほどだろうか、シャオの顔は真っ赤に染まり、タオルは元に戻る。


 「おしまいっ‼」


 シャオはそのまま出ていった。

 俺は完全に硬直して、今の光景をフラッシュバックしていた。

 初めて見たシャオの裸は、それほどまでに美しかった。



 今なら八龍と魔王を同時に瞬殺出来る。そんな気がした。



 ********************



 股間に冷水を当てて落ち着かせ、着替えをして部屋に戻る。

 シャオはベッドに潜り込み、おやすみと言っても反応しなかった。それほど恥ずかしいなら何でやったんだろう。嬉しいけど。


 自室に戻り、先程の光景を思い浮かべる。

 シャオの胸や腰回り、そして細い足。

 ドクンと股間がまた熱くなる。やれやれ、若いってのは時に罪なんだな。


 俺はベッドに潜り込み、寝ようとした。


 「············ん?」


 ふわりといい香りがする。柔らかい花のような、香水のような。どこかで嗅いだ覚えのある匂いだ。


 「············へ?」

 「失礼します、アーク」


 そこに居たのは、ナルフェだった。

 しかも下着姿。なんで? これは夢か?


 「······お願いがあって参りました」

 「と、とと、唐突だな。あはは」

 「はい、私を貴方の妃にして頂きたいのです。もちろん愛妾で構いません。シャオさんの次でよいので、私をお傍に」

 「な、なな、なんで急に?」

 「······」

 

 ナルフェは目を逸らし、黙り込む。

 何かを思案してるような、そんな雰囲気だ。

 そして、頬を染めながら話し始めた。


 「·········その、憧れだったんです」

 「憧れ?」

 「······はい。私が魔術師になったのも、王宮で働けば、素敵な騎士様と出会えると思ったから······」

 「······は?」


 素敵な騎士様って、なにそれ?

 

 「カッコいい騎士様と一緒に、白馬に乗って花畑を駆け抜ける······そんな夢を見て王宮魔術師を目指しました。だけど、騎士団には汗臭い男しか居ませんし、若い騎士が入っても、強くなることに夢中な単細胞ばかり。そんな連中を冷たくあしらってたら、いつの間にかクールな冷血女魔術師なんて呼ばれて······」

 「そ、そーなんだ」


 こ、コメントしづれぇ。

 要は少女趣味で、ナルフェの希望するカッコいい騎士は現実に存在しなかったんだ。それで勇者の俺に来たのか。


 「アークは勇者だし、可愛い女の子に囲まれて余裕もあるし、もしみんなを妃に迎えても、全員を大事にしそうだから」

 「い、いや、迎えるのはシャオだけで······」

 「だから、愛妾でいい。このままじゃ行き遅れるのは目に見えてる、だから······お願いします。私をもらって下さい」

 「え、ええと······」

 

 なんか、面倒くさくなりそうだ。

 確かにナルフェは可愛いし、下着姿からの俗胸の谷間は素晴らしい。

 

 「わ、わかった。とりあえず保留な。ちゃんと考えさせてくれ」

 「わかりました。その代わり、真剣に考えて下さいね」

 「あ、ああ」


 

 愛妾か······まさか、ナルフェがねぇ。



 ********************



 それから数日、のんびりと過ごした。

 実家でローラと過ごしたり、シャオたちと買い物したり。

 フィオーレ姉さんとお菓子を作ったり、ショウコと洋服を買いに出かけたり。ナルフェのことも考えつつ、休暇を満喫した。 


 そしてある日、家でのんびり過ごしていると、ナルフェがやって来た。


 「青龍が見つかりました」


 その一言で、俺のスイッチが入る。

 シャオたちも休暇の終わりを告げると、それぞれが戦士の顔になった。

 俺の部屋に全員が集まり、ミーティングを行う。


 「さーて、次もサクッと終わらせるか」

 「そうね、むしろ一匹じゃ物足りないわね。いっぺんに出てくれば楽なのに」

 「確かにそうですね。私達なら問題なく倒せそうですし」

 「あはは〜、わたしの矢でみ〜んな貫いてやる〜」

 「み、みんな自信たっぷりねぇ」

 「だけど、あたしたちならどんな龍でも問題ないですよ」


 赤龍で自信が付いたのか、もう迷いはない。

 さっさと終わらせて魔王を引きずり出してやる。


 

 残りの龍は7匹。さっさと片付けるぜ。

 

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