5・ショウコ
「ふむ……どうやら彼女のスキルは、《輝く盾》ですな」
スキル鑑定を持つ魔術師が、ショウコと名乗った少女のスキルを確認した。
ショウコはしきりに周囲を確認してる。その表情には不安しかなかった。
「あの、ここはどこ!? 何であたし……」
「落ち着いて下さい。貴女は召喚されたのです。この世界を救うために」
「召喚? 救う?……なにそれ……?」
「説明します」
ナルフェはショウコの手を取り、1つずつ説明した。
勇者のこと、魔王と八龍のこと、そして俺たちのこと。
「じゃあ……あたし、そこの人達と一緒に、戦うの?」
「そうです。分かって頂け……」
「なによそれ、わかるわけないじゃん!! いや、こんな場所にいたくない、帰して、家に帰してよぉぉぉぉっ!!」
「落ち着いて下さい、落ち着いて……」
「いやぁぁぁっ!! 触んないで、来ないでぇぇっ!!」
ショウコは錯乱状態だ。
いてもたってもいられず、俺はショウコに近づく。
「落ち着けって、な?」
「何よあんた、来ないでよぉぉ……帰してよぉぉ……」
「大丈夫、全部終わったら家に帰れるから、だから落ち着いて……な?」
「…………」
もちろん、帰れるかなんてわからない。
だけど、こうでも言わないとショウコは収まらない。
「ほら立って、取りあえず……お茶でも飲むか」
「………うん」
俺はナルフェに視線を向けると、ナルフェはコクンと頷いた。
本来なら、異世界の勇者ということで陛下と謁見すべきだけど、今日は仕方ない。
シャオたちを見ると、スキル鑑定の魔術師と何か喋ってる。ショウコと同世代が居れば安心するだろうし、まずはみんなを紹介したい。
「シャオ、みんな」
「では、そういうことで……」
話しかけると同時に、スキル鑑定の魔術師が去る。
シャオたちは俺に向き直り、後ろのショウコを見た。
「えーっと、まずは自己紹介ね。アタシはシャオ、こっちは妹のファノンよ」
「こんばんわ~」
「私はローラです。兄さんの義妹でもあります」
「あ、俺はアーク。こう見えて勇者だ」
「………翔子……です」
「ショウコね。よろしく」
「よろしく~」
「よろしくお願いします、ショウコさん」
取りあえず自己紹介をする。
まずは、この陰気くさい部屋から出て、お茶でもしよう。
「じゃあ、アタシの部屋でいいわ。ちょうどファノンのお菓子もあるし」
「う~ん……今回はショウコちゃんのために振る舞おう!!」
「では、お茶は私が煎れますね」
「………」
ショウコは俯いたままだ。
仕方ない、異世界がどんな場所か知らんが、こんな少女がいきなり連れて来られたんだ。
まずは、スキンシップを取って仲良くなろう。
俺たちは、シャオの部屋へ向かった。
**********************
シャオの部屋にて、ローラがお茶を煎れファノンがお菓子を出す。
ショウコの部屋は準備中なので、今日はシャオの部屋でお泊まりする事になった。
「どうぞ、お口に合えばよろしいですが」
「あ……ありがとうございます」
「お菓子もどうぞ~」
「あ、はい」
「ねぇ、歳も近いんだし、敬語じゃなくていいわ。ショウコはいくつ?」
「あ、あたしは16歳です」
「じゃあアタシとアークと同じね。だったら尚更ね」
「………じゃあ、遠慮無く」
シャオたちが積極的に話しかけるからか、ショウコは徐々に話し始めた。
お茶もリラックス効果のあるハーブティーだし、ショウコも気を許し始めてる。
「あたしが勇者パーティー………役に立つのかな?」
「ええ。ショウコのスキルは《輝く盾》っていう盾を作り出すスキルなの。直接戦闘はアタシとアークがいるから、ローラやファノンを守るのが仕事ね」
「なるほど……でも、怖いなぁ……」
「大丈夫だって、俺が守るからさ、安心してくれ」
「……うん、ありがとう」
お、初めて笑ったぞ。
かなり可愛いし、けっこうドキッとした。
「あー、ショウコのことも教えてくれよ。家族とかさ」
「家族……あたしは、お父さんお母さんと、お兄ちゃんの4人家族」
「お兄ちゃん……つまり、境遇は私たちと同じですね」
「だな。やっぱいい兄ちゃんか?」
俺はローラを見ながら言ったが、ローラには無視された。
「うん……お兄ちゃんは頭もいいし、よく勉強を教えて貰ってた。今日も宿題があったから、お兄ちゃんの部屋で勉強してて……お兄ちゃんにジュースでも持ってこようと思って部屋を出たら、ここだった……」
「あ、その……ごめん」
本当に、突然だったんだな。
そりゃ取り乱しても仕方ない。むしろこっちが悪いな。
「約束する、魔王を倒したら、必ず元の世界に帰すから」
「……うん、ありがとう」
ショウコは、柔らかく微笑んだ。
**********************
一晩経ち、落ち着いたショウコは陛下に謁見した。
そして魔王討伐に参加を表明、終わったら元の世界に帰還することを条件に協力をこぎ着けた。
それからは一緒に座学を行い、訓練にも参加した。
ショウコのスキルは《輝く盾》というスキルで、強固な盾を何枚も出せる能力だ。
もし俺が使っていたら、弱っちい盾しか出せない気がするが、ショウコは違った。
シャオたちとも打ち解け、訓練が休みの日には城下町に買い物に出たりもした。
ショウコが召喚されて3日後、訓練が終わり部屋に戻る最中。
シャオの部屋で集まり、お茶会でも開こうかと話してる時だった。
「みんな、お疲れ様」
「フィオーレ姉さん!? ま、まさか……」
「ええ。勇者パーティーの旅に同行するわ。ふふ、戦闘は出来ないけど、怪我や病気や体調管理は任せてね」
「フィオーレ姉さん……ありがとう!!」
「ええ……あら? その子は?」
フィオーレ姉さんの視線はショウコへ。
「初めまして、あたしはショウコ、勇者パーティーの《盾》です」
「あらら~……ふふ、初めまして、私はフィオーレ。よろしくね」
「はい、フィオーレさん」
うんうん、仲良きことはいいことだ。
「よーし、じゃあみんなでお茶会だな」
「ええ、フィオーレ姉さんも久し振りだし、今日はたっぷり話しましょ」
「んふふ、フィオねぇ久し振り~」
「あらら、ファノンちゃんったら……」
「ファノン、そんなにくっついてはフィオーレ姉さんに迷惑ですよ」
「へぇ……みんな、仲良しなんですね」
「ああ、幼馴染みだしな」
こうして、勇者パーティーは揃った。
このメンバーなら、どんなヤツにも負ける気がしない。
訓練も順調に進み、力も使いこなせるようになってきた。
王国の外でモンスターたちと模擬戦をしたり、徐々に戦闘にも慣れてきた。
ショウコが呼ばれて2ヶ月。ついに最初の龍が見つかった。
**********************
「来たな………」
「ええ……ふふふ、腕が鳴るわ」
「お姉ちゃん、カッコいい~」
「王国から進んだ先の火山が赤龍の根城ですか……」
「うふふ、みんななら楽勝ね」
「はい。あたしたちなら……」
陛下に出発の挨拶をし、城から出ると専用の馬車が停まっていた。
そこにいた御者を見て、俺たちは驚いた。
「……なにしてんの?」
「御者ですが」
当たり前のようにナルフェが御者席に座っていた。
「アークのハーレムパーティーに男を加えるわけには行きませんので、御者には私が志願しました」
「いや、そんなルールないし、初めて聞いたけど……」
「では皆様、どうぞ中へ」
「おい無視かよ」
シャオたちは俺を無視して馬車の中へ。
それにしても、みんな仲良くなったもんだ。
「じゃあ……火山に向けて出発!!」
俺の合図で、馬車はゆっくり出発した。
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