2・魔王ブリガンダイン
俺たちは、4人仲良く城へ連行された。
まぁそうだよな。どう考えてもおかしいよね。
現在、俺たち4人は謁見の間で、王様と向かい合っている。
全員がガッチガチに緊張してる。だってスキルを貰ったら買い食いでもしながら帰ろうと思ってたんだぜ? それなのに今は王様の目の前だ。
これも全部、このスキルが原因だよな。
俺は伝説の《勇者》で、シャオは《斬姫王》だし、ファノンは《神弓の担い手》で、ローラが《大魔術師の知識》なんて、全部がおとぎ話でしか聞いたことがない伝説のスキルだ。
普通に考えれば、勇者パーティーのスキルが発現したイコール……。
「諸君等には、復活した【魔王ブリガンダイン】を討伐して貰いたい」
やっぱそうですよね………。
**********************
「ま、魔王……ブリガンダイン?」
俺はマヌケな声を出した。
だって、魔王だぜ?
「そう。伝説の《勇者》とは、魔王の復活と同時に現れる。つまり、貴殿が《勇者》として現れた以上、どこかで魔王が復活し、眷属である八龍が放たれたはずだ。さっそく調査隊を編制し、それらしきモンスターを探している」
手際良すぎっすね。
さすがはイケメン騎士団長のオジサンだ。
「八龍とは、倒さなければならないのですか? 魔王を直接叩けば全て終わるのでは?」
我が義妹で愛しのローラがそんなことを聞く。
おいおい、もしかしてやる気なのか?
「いや、八龍は魔王城を守護する結界を維持してる存在だ。八龍を倒さないと魔王には近づくことすら出来ん……」
「なるほど……」
ローラは顎に手を当てて考え込む。
「あ、あの、ローラ? やる気満々なの?」
「そういうワケではありませんが……まさか兄さん、逃げるのですか?」
「………」
まぁ、ここで「出来ません」なんて言えない。
それに《勇者》なら逃げない。だけどノリノリで「やってやるぜ!!」とも言えないだろ?
俺の視線は幼馴染み姉妹へ。
「シャオ、お前はどうする?」
「やるわ。確かに怖いけど……まぁその、アークがいれば……出来ると、思う」
「お、おぉ………」
クッソ可愛い。
最初は強い瞳で答え、すぐに恥ずかしそうに目を逸らす。
しかも俺をチラチラ見ながら口を尖らせて……あぁもう、コイツが俺の婚約者だぜ?
もう俺の答えは決まっていたが、もう1人の妹に答えを聞く。
「ファノンは……?」
「やる。だって……アークが守ってくれるんでしょ~?」
「……もちろんだぜ。ファノンは俺の可愛い妹だからな、こいつめ~」
「えへへ~」
俺はファノンの頭をなで回す。
カワイイやつめ。このこの。
「ちょっとアーク……ファノンはアタシの妹よ……」
「兄さん、貴方の妹は私ですが……」
寒気がした。
物理的な冷気ではなく、心が冷えるような寒気だ。
霊的な何かを感じた。
「オッホン!!」
あ、やべ。騎士団長がジト目で見てる。
俺たちは慌てて王様に向き直った。
「では、貴殿等には城でスキルの扱いを学ぶ訓練を行って貰う。それと勇者殿には、城に保管してある『聖剣』を抜いて貰う」
「え、きょ、今日これからですか!?」
俺は思わず騎士団長へ言った。
すると、少し考え込んだ騎士団長は王様へ確認する。すると王様はコクリと頷いた。
「……では、明日から訓練を行ってもらおう。明日迎えを出すので、今日は帰って家族へ報告するといい」
「あ、ありがとうございます」
王様は寛大な御方だ。
そういうわけで、今日は家に帰ろう。
俺たちは城を後にし、買い食いせず家に帰った。
**********************
「何だって!? お前たちが……勇者パーティーだと!?」
「ま、まさかローラ、貴女まで……」
親父と母さんは驚いていた。
そりゃそうだ。朝送り出した息子と娘が、帰ってきたら勇者とその仲間のスキルを得て帰ってきたんだし、明日から城で訓練するんだもんな。
「そういうわけで……明日から暫く帰れない。悪い」
「それは構わんが……」
「ええ、心配だわ……」
「お母さん、兄さんが付いていますので、心配はありません」
「ああ。ローラは俺が付いてるから安心してよ、母さん」
「アーク……」
親父と母さんを安心させ、家族で食事をする。
キッチンには母さんとローラが立ち、俺と親父は酒で乾杯してた。
暫く飲んでいると、キッチンからいい香りが。
「兄さん、お酒の飲み過ぎはダメですよ。ちゃんと野菜も取って下さいね」
「はいはい。お前は俺の奥さんかっての」
「お、奥さんって……もう、からかわないで下さい」
母さんがオムライスを作り、ローラが野菜スープを作る。
恐らく、しばらくはこんな家族団欒は過ごせないだろう。
食事が終わり、俺とローラはローラの部屋へ。
窓を開けて隣の家の窓をノックする。
「は~い。あら、アークくん、ローラちゃん」
「こんばんは、フィオーレ姉さん。ちょっといいかな」
「いいわよ。さぁどうぞ」
俺とローラはフィオーレ姉さんの部屋へ。
だが、俺は気が付いた。
「今日の結果を報告してくれるのかしら? 2人はどんなスキルを?」
「あ~……えっと」
ヤバいな。
フィオーレ姉さんは寝間着だからか、すごい薄着だ。
胸の谷間もバッチリ見えるし、直視出来ない。
「……フィオーレ姉さん、何か上に羽織って下さい。兄さんに襲われますよ」
「ばばば、バカ言うなっての、誰が襲うか!!」
「あらら、ゴメンなさいね」
フィオーレ姉さんはベッドの上にあったストールを羽織り、立派な乳は覆い被されてしまった。残念です。
おっと、本題を言わないと。
「あの、実は大事な話があるんだ……」
俺は事情を説明し、足りない部分はローラが捕捉した。
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「まぁ……アークくんが、《勇者》なんて……」
「そういうわけで、暫くは城に籠もるんだ」
「そう……」
フィオーレ姉さんは淋しそうに俯く。
こんな顔は見たくないけど、どうしようもない。
「時間が空いたら来るよ、もちろんローラやシャオたちも一緒に」
「アークくん……うん、待ってるわ」
「フィオーレ姉さん、私たち頑張ります」
「ええ、応援してるわ、ローラちゃん」
絶対に来よう。
こんな淋しそうなフィオーレ姉さんを見たくないしな。
この日は早めに休む。明日から忙しいしな。
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翌日。
俺の家の前に、シャオたちとローラが揃う。
城から迎えが来るらしいので、家の前で待つことにした。
「フィオねぇ~~っ!!」
「あらら、ファノンちゃん」
ファノンは、フィオーレ姉さんの巨乳に顔を埋めてる。羨ましいぜ。
「フィオーレ姉さん、遊びに来るからね」
「ええ、待ってるわシャオちゃん」
「あ、迎えが来ましたね」
城から来たのが丸わかりの馬車だ。
オヤジ達も見送りに出てるし、こりゃ近所に知れ渡るのも時間の問題だな。
「アーク、頑張れよ」
「ローラ、ムチャしないでね」
それぞれの家族に見守られ、俺たちは馬車へ乗り込む。
これからスキルの扱い訓練が始まる。
「………」
「兄さん、どうしたんですか?」
「アーク?」
「アーク~?」
俺はそれぞれの顔を見渡す。
「いや……なんか、みんなが勇者パーティーでよかったなって」
馬車は、ゆっくりと走り出した。
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