【route 0】
1・勇者アーク
大聖堂に集まったのは、80人ほどの子供達だ。
10~20歳までの少年少女が集まり、《スキル降臨の儀式》を今か今かと待ち構えている。
「く、ふぅぅ……。ローラ、緊張するなよ?」
「兄さんに言われたくありませんね」
ローラはクールな瞳で大聖堂の祭壇を眺めてる。
「はぁぁぁ……。ファノン、落ち着いて。深呼吸よ」
「あはは。お姉ちゃんがしなよ~」
よし。シャオも同族だ。安心したぜ。
《スキル降臨の儀式》は、この大聖堂の司祭によって行われる。
司祭が代々受け継ぐスキル、《スキル降臨》の力で、俺たち1人1人に《女神アスタルテ》より贈られる《スキル》を覚醒させるのだ。
「来た……!!」
俺たちの前に、大司祭が現れる。
年相応のオッサンで、柔らかな微笑を称えたまま告げる。
「では、名を呼ばれた者は前へ。アーク!!」
「は、はぃぃっ!?」
しょっぱなから俺かよ!? 返事っつーか疑問符みたいな声が出ちまった!!
大注目を浴びながら前に出る。やばい、心の準備が。
俺は大司祭の前で跪く。
「さぁ、目を閉じて……。《スキル》に心を委ねなさい」
「……」
俺の中に何かが流れ込んでくる。
温かく、優しく、まるでぬるま湯みたいな何か。
大司祭の手が淡く発光し、跪く俺の頭に触れた。
「《女神アスタルテ》よ、彼の者に聖なる《スキル》を賜らん……!!」
ドクンと、心臓が高鳴った。
そして俺は理解した。
【ルート4】**********************
「目覚めし《スキル》……『勇者』なり!! へ?」
「へ?」
大司祭と俺はマヌケな声を出した。
勇者?
なにそれ、美味しいの?
「………」
「………」
「「「「……………」」」」
大聖堂は、静寂に包まれた。
**********************
「ゆ、ゆうしゃ?」
「勇者……勇者だって!?」
「お、おい、その少年……勇者って」
ザワザワと周囲がどよめき、俺は大司祭を見た。
だが、大司祭も唖然とし、なんのアクションも起こさない。
「あ、あの……」
俺はどうしようか迷ったが、とりあえずシャオたちの傍へ。
そこには、驚きで俺を見る幼馴染み姉妹と義妹が居た。
「ははは、勇者だってさ」
「に、兄さん……嘘ですよね?」
「いや、大司祭のスキルだぜ? 間違いなんて……あ、次はシャオの番だぜ」
「え、あ、うん」
シャオは取りあえず大司祭の傍へ。
大司祭も意識を取り戻したのか、俺の勇者はなかったことにされた。
「目覚めし《スキル》……『斬姫王』なり!!」
「え……」
シャオのスキルは、大昔に存在した最強の剣士の使っていた《スキル》で、かの『勇者』の仲間として名を残した剣士の《スキル》らしい。
もちろん大聖堂は混乱し、シャオは呆然としていたが、フラフラと俺の傍に。
「お、お姉ちゃん。スゴい……」
「あ、ははは……」
「な、なぁ、これって夢か?」
シャオは乾いた笑いを出し、俺はこれが夢かと思い始めていた。
そして、ファノンの番が来た。
「目覚めし《スキル》……『神弓の担い手』なり」
「う、うっそ~……!?」
ファノンの《スキル》もとんでもなかった。
こちらも『勇者』パーティーの一員であった弓士のスキルで、百発百中の命中精度を誇る最強の弓士の称号だそうだ。
「あ、あ~くぅ~……」
「おぉ、よしよし」
「に、兄さん。ファノンまで……」
「こりゃスゴいなんてモンじゃないな……」
かつての『勇者』パーティの《スキル》が2つも現れるとは、これは偶然なのだろうか。
俺の中に一抹の不安がよぎった。
「ローラ、お前……」
「兄さん? それはフラグですよ」
「……いや、その、スンマセン」
ここまで来ると、やっぱそうだよな。
「次の者……ローラ」
「はい。……行ってきます、兄さん」
ローラが微笑み、祭壇に登る。
そして、やはりイヤな予感は正しかった。
「目覚めし《スキル》……『大魔術師の知識』なり」
「……ありがとうございます」
案の定。ローラも『勇者』パーティーの《スキル》だった。
伝説の魔術師が使った《スキル》で、この世の全ての魔術を使用できるという能力だ。
「……」
「やっぱそうか、うん」
これで、俺たち4人は伝説の《スキル》を手に入れた。
**********************
そして儀式が終わる。
スキルをもらい、みんな満足して帰る中、俺たちは迷っていた。
「な、なぁ、帰っていいのか?」
「さ、さぁ……」
「ねぇ、わたしお腹へった~」
「ファノン、チョコならありますよ」
ローラがポケットからチョコを取りだしファノンへ渡すと、ファノンは美味しそうにモゴモゴ食べる。
その様子を見ながらどうしようか悩んでいると、やっぱり来た。
「いた!! ちょっと待ってくれ!!」
大司祭が、騎士らしき人物を連れて来た。
帰らなくてよかった……のか?
「勇者様……ですか?」
「えっと、そうみたい……です」
「……間違いありません。私の《鑑定》でも、この方は《勇者》という結果が出ています」
騎士と一緒に来たのは、どうやら《鑑定》のスキルを持った人みたい。
その人は、シャオたちも鑑定すると、涙を流し始めた。
「お、おぉぉ……まさか、伝説の勇者パーティーが揃うとは……」
「あ、あのー」
「泣いてますね……」
「ねぇ、帰っていい~?」
シャオたちもどうしていいのか分からないみたい。
でも、勇者ってことは……まさか。
「伝説の勇者パーティーの皆様、このまま城へお越し下さい。陛下がお会いいたします」
ま、そうなるよな。
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