17・ガラス玉と魔性の宝石・転がる先の未来へ


 それは、まるで蟲が這うような感覚だった。

 足下からジワリジワリと、あり得ない想いが心を蝕んでいくようだった。


 薄ボンヤリとした記憶。

 自分が自分ではない、だけど自分なんだという自覚。

 もの凄くイラつき、もの凄く眩しかった。


 温かく包まれ、優しく抱きしめられた。

 囁かれる言葉は甘くてくすぐったい。そして蕩ける。

 見つめられた瞳は、とてもキラキラしていた。



 まるで、《魅惑の瞳》のような。

 


 **********************



 見慣れた小さなガラス玉より、突如として現れたダイヤモンドのが美しいに決まってる。

 小さな頃に貰ったガラス玉より、大人になってから貰ったダイヤモンドの方が遙かに価値がある。


 だけど、透き通るようなガラス玉は宝物。

 ダイヤモンドより価値は無いけど、ダイヤモンドにはない温かさが宿っている。


 ダイヤモンドは美しい、そして価値があるのは分かる。

 だけど、自分たちにはもったいない。そして不釣り合いだ。

 どんなに美しくても、自分たちには似合わない。


 ガラス玉を欲しがる少女は4人もいる。

 キレイなガラス玉は、取り合いになるだろう。

 だから、ガラス玉を転がして、転がった先にいる少女の物にすると決めた。


 だけど、ダイヤモンドは嗤ってる。

 怪しく輝き、少女たちを見て怪しく輝く。

 少女たちを惑わし虜にする。

 

 少女たちの意思など関係ない。

 それはダイヤモンドではなく魔性の宝石。

 まるで、見た者を虜にする《魅惑の瞳》のような輝き。


 少女たちは魅入られる。

 ガラス玉を捨て、魔性の宝石の虜となる。


 転がるガラス玉は少女たちの傍を回り続ける。

 邪魔だと蹴られても、見られることが無くても回る。


 少女たちの記憶は封じられ、偽りの記憶を植え付けられる。

 魔性の宝石は。足下を転がるガラス玉をあざ笑う。


 ガラス玉の前に、女神が現れる。

 女神の輝きが、魔性の宝石に亀裂を入れる。

 輝きが失われ、このままでは砕け散る。


 地面に転がったガラス玉を掴むのは、宝石より美しい女神。

 女神の輝きが魔性の宝石を砕き、少女たちを解放する。

 

 真実を知った少女たちは、ガラス玉を見つめる。

 女神の手にあるガラス玉。女神は優しく手を差し出す。



 果たして、彼女たちに手を伸ばす資格はあるのか?



 **********************

 


 魔王が討伐され、勇者ユウヤはニセ勇者だった。

 真の勇者アークが現れ、魔王を討伐した。

 

 そのニュースは王国中に広がった。

 ユウヤを貶す者もいたが、ユウヤは8龍を倒したことで力を使い果たした、だから勇者の座をアークに譲ったなどと、真偽不明の噂がいくつか広がった。

 

 そして真の勇者アークが帰還し、真実が語られた。

 勇者ユウヤは、魔王の呪いを浴びて勇者の資格を失い、そのまま死亡したと。

 戦場にいたはずの兵士たちすら信じた。それほど勇者の言葉は絶対だった。


 真の勇者アークの真実を、誰もが信じた。

 ユウヤは勇者でなく英雄だと、誰もがもてはやし、その栄光を称えた。

 ニセ勇者と貶し、バカにする声もあった。

 

 だが、真実は違う。

 おぞましく、語ることすら憚られる。


 

 ユウヤの真実を知る者は、少数だがいた。



 **********************



 ユウヤが処刑される前。

 怪我の治療を終えて王国に運び込まれた時だった。


 支離滅裂な言動に、繰り返される脱糞と失禁。

 眼球はグルグル回り、鼻水やヨダレも垂れ流し。

 

 その姿を見た王は嘆き、その醜悪な姿から地下に監禁された。

 真の勇者アークに事情を聞くために、隔離されることになった。


 そして、なぜ勇者の資格を失ったのか調べることになった。

 恐らくは魔王の呪いだが、明確にしなくてはならないことである。

 そして《スキル鑑定》のスキルを持つ王宮魔術師がユウヤを調べ、驚いていた。



 ユウヤは《魅惑の瞳》というスキルを持っていた。



 それは、ブルム王国では忌まわしきスキル。

 かつての王が所持し、何人もの女性を虜にしたスキル。

 《色欲王》とも呼ばれ、100人以上の妾を侍らせた王のスキル。


 ユウヤが、2つのスキルを持っていたなんて、誰も思わなかった。

 召喚時に、輝くような黄金のオーラを纏っていた、だから誰もが勇者だと信じ、ロクに調べもしなかった。


 この事実を知った騎士団長は、ユウヤの妃たちを調べた。

 するとやはり《魅惑の瞳》の痕跡が現れた。

 騎士団長の進言で、城中の若い女性やメイド、そして妊娠して城を出て行った女性を調査した。


 案の定、全員が一時的に昏睡状態になっていた。

 驚いたことに、城の若いメイドの5割以上が魔王討伐と同時に倒れたそうだ。

 その女性たちは数時間で眼を覚まし、何人かは泣き崩れたらしい。

 

 ユウヤの4人の妃たちも、魔王が倒れてそのまま昏睡状態になった。

 どうやらこの4人が1番長く洗脳状態にあったため、起きるのが遅いようだった。



 そして、4人の妃が眼を覚ました。



 **********************

 


 シャオは王城で与えられた部屋のベッドの中で、震えていた。

 

 「なんで、なんで……なんで、アイツがアタシを……」


 自分は、アークに何をした?

 何故、ユウヤとの記憶がある?

 どうしてアークは悲しそうな瞳をしてる?

 なぜ、わたしははだかでゆうやと……?


 「イヤァァァァァァっ!! なんでなんでなんでっ!! ちがうちがう、アタシはアタシは……!!」


 シャオは叫んだ。

 メチャクチャに暴れ、シャオの叫びを聞いた兵士が部屋に入り、シャオを押さえつける。

 城の専属の薬師がシャオに無理矢理何かを飲ませると、シャオの意識は途切れた。


 それから数時間後。

 目覚めたシャオは部屋の隅で膝を抱えていた。


 「うそ、うそよ。なにこれ、なんで……。なんでアタシ、あの勇者に?……アタシが好きだって? ちがう、アタシはアークの……。アーク、なんで、違う。アタシはアークにあんなヒドいこと言わない。アタシは、アタシは……」


 シャオの精神は、崩壊寸前だった。 

 爪を噛み、身体は震え、目は虚ろだった。


 自分では無い自分の記憶が信じられなかった。

 身に覚えがある。だけど信じられない。


 シャオの愛する人はアークで間違いない。

 だけど、シャオ自身がアークを拒否したのだ。

 そのことを、シャオはしっかりと覚え……思い出した。


 「なんで、なんで……。う、うぅぅ……、アーク、なんでぇぇ……うぁぁ……」


 ユウヤを、心から愛して身体を捧げた記憶。

 一緒に酒を飲み、語り合った記憶。

 全てが鮮明に思い出せる。そして、身に覚えが無い。


 「わかんない、わかんないよぉ……」


 

 シャオは1人。頭を抱えて泣き続けた。



 **********************

 


 ローラは部屋の隅で呟いていた。


 「なぜ、どうして私があの勇者と? 可笑しい可笑しい、私はあんな勇者好きじゃない。私は私は兄さんの妹、あんな勇者の妃じゃない。私が好きなのは兄さん。私はあんなコト言わない。私はずっと兄さんが好き、勇者の妃なんかじゃない。兄さん、兄さん、私は……勇者に、ナニヲされた? どうして勇者に初めてを? どうしてあんなことを? 勇者、勇者が、勇者がなにかしたんだ、私に何かを、やだやだ、怖い、怖い……兄さん、兄さん、たすけてにいさん……」


 寝間着のまま、ボサボサの髪で、うつろな目で呟く。

 シャオのように暴れこそしなかったが、それでも危険な状態だった。


 「にいさん………私、なんてこと……」



 ローラは俯き、ようやく涙を流し始めた。



 **********************

 


 ファノンは、呆然としたまま動かなかった。

 

 「………………………………………………………………」


 目は虚ろで、夢と現実の区別がついてないように見える。

 いつのも天真爛漫な姿は全くと言っていいほど感じなかった。


 「………………………………………………………………」


 空白。

 思考が完全に停止していた。

 無我の境地と言ってもいいくらい、ファノンはカラッポだった。


 「…………………………………………………………………」


 だけど、空白に割り込む1人の影。

 純白の思考が僅かに色づいた。


 「………………………………あー……………………………………く……………」


 無意識だろうか、だが表情は変わらない。

 そして、瞳から零れる1筋の涙。


 「……………………………ごめん、ね………………」



 透き通るような涙は、静かにこぼれ落ちた。



 **********************



 フィオーレは、4人の中では1番大人だった。

 だからこそ、必死に自分を落ち着かせて考えた。


 「どうして……でも、こんな。ヒドい……」


 ゾワリと身体が震え上がる。

 記憶はある。勇者を愛し合い、将来を誓った記憶がある。

 だけど、身に覚えがない。そもそも今のフィオーレは勇者なんて愛していない。

 

 だけど、フィオーレは勇者を愛していた。


 「あり得ない、あり得ないわ……。勇者? なんでこんな……」


 まるで、赤い記憶を青い記憶が混ざり合ったような不自然さ。

 2人のフィオーレが1つの身体を使っていたような、そして記憶が混ざり合ったような不愉快さを全身と記憶で感じていた。


 「勇者………まさか、勇者がなにかしたんじゃ……」



 そして、フィオーレの部屋のドアがノックされた。



 **********************



 衝撃の事実は、4人の心に深く突き刺さった。

 城の王宮魔術師が、それぞれの部屋を訪問し、真実を話したのだ。


 「せん、のう?」

 「はい。元勇者ユウヤのスキル……《魅惑の瞳》に、貴女は魅入られていました」

 「………」


 せんのう。

 洗脳。

 詳しい事情を聞いたシャオは、カタカタ震えた。

 それは、究極の殺意だった。

 

 「………アイツは、アイツはどこ」

 「っ!!」


 王宮魔術師は震えた。

 斬姫王シャオと呼ばれた剣姫の殺気が膨れあがり、ビシリと窓ガラスに亀裂が入った。

 


 「殺す」


 

 **********************



 「…………」

 「つ、つまり、その……貴女は元勇者ユウヤに、洗脳されて」

 「…………」


 ローラは、真実を聞いても黙っていた。

 だが、王宮魔術師は震えていた。

 

 「そうですか。私は……操られていたのですね」

 「は、はい」

 「そうですか」


 のっぺりとした声。

 感情が籠もっていないような、まるで人形が発したような声だった。

 そして、ニコリと微笑んだ。

 


 「元勇者はどこにいますか?」



 王宮魔術師は、背筋が凍り付く錯覚に囚われた。



 **********************



 「じゃあ、じゃあ……あたしは、操られてたの? 勇者に?」

 「はい。それは間違いありません。恐らく元勇者ユウヤは、貴女たちをずっと洗脳していました。かつての勇者パーティーが持っていたスキルを持つ貴女たちを手に入れるために、かなり深く洗脳していたのでしょう」


 王宮魔術師が、ファノンに真実を告げる。

 

 「そっか………でも、アークは赦してくれないよね……操られてたあたしだって、アークから見たらあたしだもん……」


 ファノンは怒りより、悲しみが大きかった。

 真実が突き刺さり、心が諦めていた。


 「アーク……ごめんね……ごめんね、ごめんね………う、うぅ、うぇぇぇ……」


 ベッドの上で顔を押さえ、ファノンは静かに涙を零す。

 王宮魔術師は、静かに部屋を後にした。


 そして、再び部屋のドアが開かれる。

 

 「ファノンちゃん………」

 「え………フィオ、ねぇ……?」


 薄手の寝間着姿のフィオーレだった。

 悲しそうに微笑み、ファノンのベッドの傍へ来た。


 「……全部、聞いたのね」

 「うん……フィオねぇも?」

 「ええ。ぜーんぶ、聞いちゃった……」


 ファノンは、フィオーレがベッドに腰掛けたのを見て、隣へ移動する。

 フィオーレは震える手でファノンを抱き寄せた。


 「フィオねぇ……どうしよう」

 「………」

 「わたし、アークにいっぱいヒドいこと言っちゃった……」

 「……私もよ。もう、取り返しが付かないくらい、ヒドいこと……」

 「………」


 2人は寄り添ったまま、黙り込む。

 

 「………どうしよっか」

 「え……?」

 「これから、どうしよっか……?」


 フィオーレは感情の無い笑みを浮かべる。

 まるで、このまま死んでもいい……そんな表情だった。


 「アークに……逢いたい」

 「…………そうね」

 「逢って、謝りたい。アークになら、殺されてもいい……」

 「…………そうね」

 「最後に、ちゃんと謝ろう? フィオねぇ……」

 「ええ、謝ったら……」

 「うん……一緒に、どこか行こうか……?」

 「そうね……シャオちゃんや、ローラちゃんも一緒に……」

 


 2人は、そのまま寄り添って泣き出した。



 **********************

 


 「どけ、殺すぞ」

 

 ユウヤが拘束されている地下に向かうのは、2人の少女。

 シャオとローラは、殺気をまき散らしながら進んでいた。


 シャオの手には大太刀が握られ、ローラの全身から魔力が漲っていた。

 何人もの兵士が2人を拘束しようとしたが、誰も近付けない。

 そして、事情を知る騎士団長は、2人を拘束を諦めて地下の通路を開けた。


 余りにも、悲しすぎる。

 こんな若い少女たちが、勇者の慰み物となった。

 王妃として迎えられる予定が、ニセの勇者ということで全てパァになった。


 残ったのは、元勇者の妃という肩書きだけ。

 正気に戻った少女たちの恨みがユウヤに向くのは当然だった。


 だから、ここで恨みを晴らすのも仕方が無い。

 騎士団長はそう考えた。


 「………ユウヤ、あの野郎だけは……!!」

 「シャオさん、私も同じ気持ちです」


 シャオとローラは寝間着のまま地下牢獄へ。

 そして、最も厳重な扉をローラの魔術で吹き飛ばし、かつての勇者であるユウヤと対面した。


 「ほぎゃば? ほげげげげ?」


 十字架に拘束され、身動き1つ採れないユウヤ。

 意味不明な言葉を発し、狂った笑みでシャオたちを迎える。


 「ゆ、うや……ゆう、やァァァァァァァッ!!」


 シャオは太刀を投げ捨てユウヤに向かって走り出す。

 その拳は硬く握られ、全身全霊の一撃を顔面に食らわせた。


 「はがぎゃぶぇーーーーッ!!」


 鼻血が吹き出し、鼻がへし折れる。

 シャオは止まらなかった。

 


 「クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!」



 滅多打ち。

 腹、腕、顔面、股間、足……殴れる場所は殴りまくる。

 シャオの手の皮が剥け、血が流れる。

 

 

 「があぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」



 いつの間にか、涙も流れていた。

 ユウヤの顔面は腫れ上がり、股間からも血が流れていた。


 「あ、あぁぁ………あぁぁぁぁぁ……」


 シャオは崩れ落ちる。

 傷だらけの拳からは血が流れている。

 そして、その両手をローラが優しく包み込んだ。


 「ろーらぁぁ………あたし、あたし……」

 「わかってます、わかってます………私もです」


 ユウヤはピクピクしている。

 どうやら死んではいないようだ。


 「アークに、逢いたい………逢いたいよぉぉ……」

 「しゃおさん……わたしも、あいたいです………う、うぁぁ……」


 2人は抱き合って号泣した。

 ローラの怒りは、シャオが全て叩きつけてくれた。

 2人の目に、ユウヤは既に映っていなかった。



 2人の背後で、騎士団長が目を伏せていた。



 **********************

 


 シャオたちは、ファノンの部屋に案内された。

 これからのことを話すために、フィオーレが呼んだらしい。

 ベッドには、寄り添うようにファノンとフィオーレが居た。


 「ファノン……」

 「おねぇ、ちゃん……おねぇちゃぁぁん……」

 「ファノン……ファノン……」


 シャオはファノンを抱きしめた。

 思い切り、とても強く。


 「フィオーレ姉さん、私……」

 「ローラちゃん、いいの。みんな同じよ」

 「フィオーレ姉さん……」


 ローラはフィオーレの胸に飛び込んだ。

 すると、ローラの嗚咽が聞こえ、フィオーレはローラを強く抱きしめる。


 

 4人は、暫く泣き続けた。



 **********************

 


 暫くすると落ち着いたのか、4人は泣き疲れてそのまま眠ってしまった。

 各々がこれからのことを考えてる内に、眠ってしまったようだった。

 

 まずは、アークに謝罪しなければならない。

 だが、シャオは赦してくれないと思った。ローラは怖かった。ファノンは諦めていた。フィオーレはもう死にたいと考えていた。

 

 アークの心は既に離れてる。

 あんな仕打ちをした4人を赦すわけがない。


 償うつもりはもちろんある。

 だが、赦して貰おうとは4人とも考えていない。



 だけど、謝罪はしなくてはならない。



 **********************

 


 「………?」

 「おお!! 起きられたか!!」


 目覚めたシャオの傍に、王宮魔術師がいた。

 シャオはベッドから起き上がると、辺りを見回す。


 「あれ、ここは……アタシの部屋?」

 「シャオ殿、貴女は2日間眠っていたのです。まるで寄り添うように、4人で……」

 「2日……」

 「はい。それと、明日には真の勇者アークが帰還します。体調は平気ですかな? よければ帰還の報告に出席して頂きたいのですが」

 「………はい」


 シャオは無意識で返事をした。

 なぜか、ローラたちに会いたかった。


 王宮魔術師が部屋を出ると、シャオはローラの部屋に向かった。

 通路の途中でフィオーレに会い、ファノンとローラにも出会った。

 

 4人は1番近いローラの部屋に集まる。


 「明日、アークが帰って来るって……」

 「はい。聞きました」

 「王様に報告するから、あたしたちも出てくれって」

 「そうね……」


 4人は黙りこむ。

 そして、シャオが立ち上がり強く言う。


 「アタシ、アークに謝る」

 「シャオさん……」

 「赦して貰おうなんて考えてない。でも、ちゃんと会って謝りたい」

 「……あたしも」

 「私もよ。そうしなくちゃ行けない気がするの」

 「ローラ、アンタはどうするの?」

 「………兄妹に戻りたいなんて、私からは言えません。ですが……謝りたい、です」

 「決まりね。謝ってケジメを付けましょう。その後でアークがアタシを赦さないなら、この命を持って償っても構わないわ」

 「あたしも、アークならいい」

 「私もよ」

 「………私もです」


 4人の瞳には、力が宿った。

 赦してもらうのではなく、命を持ってケジメを付ける。

 どんな結果になろうと全てを受け入れる。たとえ、命を失うことになろうとも 

 それが4人の出した答えだった。


 

 真の勇者アークは、間もなく帰還する。

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