第一話  ◆◆登場人物一覧◆◆

【あらすじ】

 奈良時代。

 陸奥国みちのくのくに桃生柵もむのふのきは、蝦夷えみしと戰の最中。




【登場人物一覧】


 ・長尾連ながおのむらじの真比登まひと……軍監ぐんげん

 建怒たけび朱雀すざくの二つ名有り。左頬に疱瘡もがさ

 愛馬、麁駒あらこま

 武器は流星錘りゅうせいすいを使う。

 鎮兵ちんぺい伯団はくのだんを率いている。

 妻の佐久良売にデレデレの29歳。


 ・長尾連ながおのむらじの佐久良売さくらめ……絶世の美女。

 桃生柵もむのふのきで一番えらい女性。

 医務室の天女。

 つまの真比登を愛しぬいている24歳。


 ・道嶋みちしまの宿禰すくねの嶋成しまなり……鎮兵ちんぺい。鷲鼻。

 実は貴族。昔は身分にあぐらをかいた、しょーもないボンボンだった。

 今は大椿売と結婚を前提にしたおつきあい中で、春まっさかりの22歳。

 


 ・車持君くるまもちのきみの大椿売おおつばきめ……ふっくら体型、顎が三日月。

 医務室で頑張っている。桃生柵もむのふのきに来ておおきく成長し、もう、顎も気にならない。

 嶋成とラブラブ17歳。

 

 ・上毛野君かみつけののきみの大川おおかわ……副将軍であったが、解任され、奈良へ。

 美貌の25歳。


 ・石上部君いそのかみべのきみの三虎……大川の従者。大川とともに、奈良へ。

 古志加を可愛がるが、妻にはしない朴念仁ぼくねんじん、25歳。


 ・吉弥侯部きみこべの古志加こじか……癖っ毛の美女。

 上毛野衛士卯団かみつけのえじうのだん衛士えじ

 腕磨きの為、仮の鎮兵として、桃生柵もむのふのきに来たが、戰が終結するまで、鎮兵を抜けることができない状況に陥った19歳。


 ・北田きただの花麻呂はなまろ……額に藍色の布を巻くイケメン。古志加のおりの21歳。


 

 ・韓国からくにのみなもと……福耳、高身長、イケメン。

 鎮兵であったが、大川のはからいで鎮兵を抜け、夢を追って、大川と奈良にいってしまった19歳。



 ・倉木くらきの若大根売わかおおねめ……そばかす、ぱっちり目。

 佐久良売お付きの女官。

 ラブラブだったみなもとが、夢を追って奈良に行くのを、止めることもできず……。迎えに来てくれる事を待つ、健気な18歳。



小竹売しのめ……長尾連ながおのむらじの屋敷の女官。古志加と同室。


 ・荒海あるみの久自良くじら……鎮兵。ぽっこりお腹。嶋成、花麻呂と楽しくつるんでいる既婚者、23歳。



 ・丈部はつせべの五百足いおたり……真比登の擬大毅ぎたいき(副官)。チョビ髭。大人の落ち着き、おだやかな性格、22歳。



 ・丈部はつせべの小鳥売ことりめ……厨屋くりやで女官にまじって働く、郷の女。ふっくら可愛い17歳。

 五百足の妻となりラブラブ。



 ・長尾連ながおのむらじの佐土麻呂さとまろ……佐久良売、都々自売つつじめの父。




 ・長尾連ながおのむらじの都々自売つつじめ……佐久良売の同母妹いろも、19歳。

 つまの実家、下野国しもつけのくにに避難中。


 





   *   *   *




 おまけ。






 長尾連ながおのむらじのの屋敷の朝餉。


 若大根売わかおおねめ小竹売しのめが、食事の世話をする。


 食事の席につくのは、佐土麻呂さとまろ佐久良売さくらめだ。

 真比登まひとは朝餉を兵士たちととるので、朝日が昇る前に、佐久良売の部屋を去る。


「お父さま。これを差し上げますわ。泰平長寿を祈念いたします。」


 と佐久良売が取り出したのは、木綿に赤い刺繍……、がたがたの縫い取りの、お世辞にも、上手とは言えない縫い取りの手布である。


「おお、これは、佐久良売の手縫いか! 嬉しいなあ! ……赤い。」


(赤い、これは、何だ……?)


 丸い。ところどころ、ゲジゲジと突起がある。

 何かの生き物だ。目がある。

 佐土麻呂は目をこらした。


「赤い、モグラか。ふむ。両手を広げて、威勢が良いな。」


 良くわからないが、きっとそうではないか? と褒めてみる。

 佐久良売は、ひきつった微笑みで、


「ほほほ……。喜んでいただけて?」


 とだけ言った。雰囲気が冷たい。氷つぶての風が吹き付けてくるようだ。


 ───余計な事は何も言わずに、ただ喜んで受け取れ───


 氷つぶての風はそのように告げている気がしてならない。


(まずい! 違ったのかな? がっかりしないで佐久良売〜!)


「うん、嬉しい、父はすごく、すごおおおく、嬉しいぞ! なにせ、私の為に佐久良売が手縫いしてくれたのだからな。大事に使わせてもらうよ。」

「なら、良かったですわ。お父さま。」


 佐久良売から氷つぶての風が吹き付けてくるのが、やんだ。


「うんうん。」


 佐土麻呂は、満足して頷く。


(ふっふっふ、佐久良売にはつまができたが、愛されているのだよ、この父は! ふっふっふ……。)










 後日、佐久良売のつまが懐からだした手布を見て、


「あ───っ!」


 と叫んで、


「ちょっと見せろ!」


 驚く義理の息子から手布をひったくり、広げ、


(このガタガタな縫い取りは、間違いなく佐久良売!

 父にくれた手布より、上手に縫ってある……だと……?!

 父にくれた手布ではわからなかったけど、これを見ればわかる。鳥だ!

 そうか! 真比登の二つ名……。)


「モグラじゃない! 朱雀だったあ───!」


(憎い……。)


「ふんっ!」


 と涙目でそっぽを向くことになるとは、知らない佐土麻呂であった……。






       ───完───

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