帰還
学校から半ば孤立していた九条家の僕と聖女である桜花。
そんな中で僕は薬が切れて完成しているであろう神楽を回収するために北部へと帰還していた。
「……蓮夜様ぁ。私はもう駄目みたい……学校怖いよぉ」
その間に虐められていたであろう桜花はもう心が折れ、意気消沈していた。
「無礼ですよ?」
僕に抱き着いて涙ながらに泣き言を漏らしていた桜花を神楽は無理やりにでも遠ざける。
「誰でしょうか?この人は……蓮夜様。いつでも命令があれば斬り殺せますよ?」
「ひぃぃぃ!?」
完全にやり気を漲らせている神楽が桜花を見ながらそんなことを告げる。
「やめろ、殺すな。その子は立派な聖女候補だ。殺すような子じゃないよ」
「……これがですか?」
僕のことばを聞いた神楽は桜花へとまるでゴミを見るかのような視線を投げかける。
「あわわ……」
そして、そんな神楽の態度に桜花は顔面を蒼白にさせている。
ゲーム内だと二人でイチャイチャしていた主人公とヒロインという構図は完全に消えてしまったみたいです。
両方庶民の出ということでかなり仲良かったんだけどな、ゲームでは。
まぁ、これもそれも全部僕のせいだろう。
神楽はもう嫉妬心を隠そうともしていない。
「あぁ、そうだよ。あの子でも一人の明確な強者だ……そう簡単に殺していい人材ではないね。九条家全体で彼女を聖女に押し上げるつもりなんだ」
「……」
僕の言葉である以上、神楽は否定できない。
それでも、桜花には侮蔑的な視線を向け続ける。
「……私が聖女になりましょうか?加護のようなことも私の聖であっても出来ます」
「流石にやめておいた方が良いだろう。加護を判別するものもあるし、聖と加護は似ているが、その根本は違う。前線向けの聖と後衛向きの加護とでは、両者同じようなことは出来るが、それでも本質的なところでは及ばないさ」
「……」
神楽は、それはもう見事に嫌そうであった。
「……二人、出来ない……」
そして、神楽は思わずと言った形でぽつりと言葉を漏らす
「別に僕たちの生活は変わらんから心配する必要はないさ。二人とも仲よくやってくれよ。僕は僕で会わなきゃいけない人がいるからここらへんで一旦外に出てくるよ」
「えっ!?」
「……かしこまりました」
「ではな」
僕は宿泊室の中で驚愕する桜花と淡々とした態度で頷く神楽を残してここをしばし抜けるのだった。
■■■■■
「あわわわわわ」
その日の夜。
桜花が浴場に軟禁されている間に男と女が交わる音と嬌声を前にこれまで清く生き続けてきた一人の少女、桜花が顔を真っ赤に染めて、チラチラ視線を送りながら大慌てしていたとしかしていなかったとか……。
ちなみに九条家の広い屋敷は工事中である。
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