入学準備
僕の圧は相当のものである。
校長にはしっかりと桜花並びに僕の神学校への入学を認めさせた。
そうして、僕は桜花を連れて九条家が京に持つ屋敷へとやってきていた。神学校へと入学するための準備を行っているのだ。
「……そ、それで……その、本当に自分が聖女になるんですか?」
屋敷に連れてこられ、高い着物を着させられた桜花が不安そうな声色を上げる。
「あぁ、そうだよ」
そんな彼女の言葉に僕は頷く。
「……その、私はただの貧民街の娘です。ご期待に沿える気がしないのですがぁ」
「安心してくれて良い。君の前にいるのは九条家の人間だ。教会内部において最もたる力を持つ貴族家だ。天皇陛下に継ぐ権力者である五貴族家の一つであるぞ?」
「えっ……そ、そんなに?」
僕の言葉を聞いた桜花が表情を引きつらせながら驚愕の声を漏らす。
「あぁ、それだけの権力者だよ?君の前にいるのは」
そんな彼女の言葉に僕は頷く。
どれだけの貧民であるが杷国に住まう者たちであれば天皇陛下を知らぬはずがない。その天皇陛下の次に偉いと聞けば誰でも凄いと思ってもらえる。
「だからこそ、安心して良い。僕の庇護下にいる君であれば問題なく安心して聖女を目指すことが出来る。君が、聖女となれれば孤児院のみんなは楽な生活を送れるだろう」
既に僕が多額の援助をしているので桜花が何をしようとも孤児院の連中は楽な生活を送れること間違いなしだろう。
「……わ、私がみんなを……!」
僕の言葉を聞いた桜花の瞳に輝くが宿る。
結局のところ、神楽もそうだがこの子たちはゲームの主人公陣営として活躍する子たちなのだ。情に訴えるのが一番早い。
「あぁ、そうだ。孤児院の者たちだけではない。君の力があればより多くの人を助けることが出来るだろう……君だって、理解はしているであろう?自分が生まれた孤児院に未来がないと」
誰がどう見たってあの孤児院が限界であるということは理解できるだろう。
「……っ」
「だが、君ならば彼らの未来を作れるのだ。君自身が有力者となることで。どうかな?少しは興味出て来たりしないかな?」
「……ッ、ですが、本当に……私なんかに」
「安心したまえ。そのために僕がいるのから。君の心配事はすべて僕が解決してみせよう。さっきも言ったけど本当に凄い子なんだよ?」
「……そ、それなら……でも」
「気負うことはないよ。君は最高のサポートの元に神学校に向かうだけだ。君に何があっても僕が必ず守ると誓おう」
「……ッ」
「故に安心してほしい。君が教養を蓄え、将来に孤児院を救えるような人間になれるまで僕がサポートし続けるよう。だから、僕と一緒に神学校へと通わないか?」
「そ、そこまで……言われてしまったら」
孤児院にいた頃から最年長組の中でも常におどおどしていて自信のなさそうだった彼女はしっかりとここでも自信のなさを露呈させている。
「……ね、年齢とかって、大丈夫なの?」
「別にいつ入学しても問題ないよ。流石に未成年である必要はあるけど。三歳の餓鬼と十代後半が同級生になることだって全然ある世界だよ」
「え、えぇ……」
僕の言葉にそれはそれでちょっとおかしいのでは?といいたげな表情を浮かべている桜花が首をかしげる。
まぁ、その気持ちはわかる。神学校も利権の絡むカオス。
どこまで行っても利権しかない世界である。いやぁー、醜いね。僕も利権を貪る側だけど。
「だから安心してくれていい」
「……ちなみに、聞きたいんだけど、年齢は?」
「あぁ、そういえばまともに自己紹介もしてなかったね。僕は九条蓮夜。気軽に蓮夜を読んでくれたまえ。年齢は十歳。今年で十一になるよ」
未だ明確に権力関係を理解していないこの子であれば気軽に蓮夜と呼ぶだろう。それがどんな意味を持つのかも理解せずに。
「お、思ったよりも若い……っ!」
「そうだね。見た目相応ではあると思うんだけどねぇ、それで?桜花。君の自己紹介も聞きたいな」
「あっ、はい。私は桜花。十四歳で、今年に十五歳になります。えっと……えっと、料理が好き!」
「なるほど。料理が好きなんだね。じゃあ、二人でいるときは料理係を頼もうかな」
「お任せを!料理は、自信ある!」
これまでずっとおどおどとしていた自信なさげだった
本当に料理には自信があるんだな。
「それじゃあ、制服とかの確認をしようか。後は教科書も」
僕は異空間から制服、靴、カバン、教科書、筆記用具等を全部出していく。
「えっ!?こ、こんなに……!?」
どんどん自分の前に積み上げれていくものを見て桜花が動揺の声を上げる。
「必要なものはこれで全部。あぁ、既に入学手続きは済んでいるから入学は何の問題もなくできるから安心してね。いやぁー、それにしても良かった、良かった……君が断ったら僕どころか校長や他の枢機卿の顔に泥を塗るところだった。危うくあの孤児院が壊されるような大事態になるところだったよ」
「えぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!?」
さらりと告げた僕の言葉に桜花が驚愕の声を漏らす。
「ん?どうしたの?」
顔を少し青ざめながら震える桜花の方へと視線を向けた僕は彼女に向けて笑顔のままに声を上げるのだった。
あとがき
新作です!
読んでくれると嬉しいです!
『悪役貴族に転生したけど魔法を極めたい!~努力なしでも最強クラスの悪役が一切の悪事を行ずに魔法馬鹿の最強魔法使いとなった結果、ゲームのヒロインたちが押し寄せてくるようになった件~』
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