邪龍

 今回の旅の目的は僕が色々な場所に赴いて知己の仲間を増やすということと神楽を受け入れてくれる人を増やすこと。


「……うーん」

 

 そして、もう一つ。

 僕と神楽を民衆の味方として名を売るためである。


「龍かぁ……」


「中々に厳しい相手ですね」

 

 冒険者として国中を渡り歩く僕たちはたまに自分たちの本来の姿もさらしながら人を助けるために手を差し伸べていた。

 そんな旅を続けて一年。


「流石にちょっと面倒な相手ではある」


 とうとう辺境の地にまでやってきてしまった僕と神楽は行きついたそこそこ大きめの街の外れにある村で一柱の魔物を倒してほしいという依頼を受けていた。


「……そうですね」


 基本的に魔物には等級と言われる格が定められている。

 ゴブリンなどが属する最下級、それよりも少し強い五等級、ゴブリンの上位種などが属する四等級、ゴブリンキングなどが属する二等級、一国で戦うようなレベルの一等級、そして、ごくまれに生まれる埒外の者たちのみが倒せるとされる特級。

 最後に人では勝てぬとされている深級。

 この計八等級に魔物が分けられている。


 今回、僕たちが受けた依頼は長き時を生きた龍を倒してほしいというもの。

 龍は人々からの信仰を集めることもあるような魔物であり、その格は神に近い。特級レベルと言って良いだろう。


「ぶっちゃけ僕であれば勝てる……勝てるのだが、問題は周りへの被害であるな。龍との戦闘となればその余波だけでここら一帯が荒野になりかねない。それゆえに隔離してから戦うなどの工夫が必要となるが……」


「申し訳ありません。私はあまり結界が得意ではなく……」


 人を助け、人を守る聖属性。

 当然その聖の属性では結界を貼ったりできるのだが、イマイチ結界魔術の伸びは悪かった。流石に龍との戦闘の余波を抑え込めるほどの結界はまだ貼れないだろう。


「となると、だ。隔離するのは僕の役目となる。いけるか?神楽」


 僕は自分の前で跪いている神楽へと疑問の声をかける。

 邪龍との戦闘の余波を確実に封じ込められるように空間を断裂させて隔離する荒業も僕であれば出来てしまう……だが、流石にそれと並行して龍と戦うのはちょっとだけキツイ。


「この一年間。蓮夜様と共に行動する中で私も確かに力をつけてまいりました。必ずや勝利してみせましょう。我々へと助けを求めてきたあの村の人たちは毎年、村に住む若い女性を一人。生贄として捧げているようです。そういう者たちを助けてこその我々です」


 そんな僕の疑問に対して神楽は力強い言葉で頷く……別にそんな成人君主でもないけどな?僕は……まぁ、そう思われるように動いてはいるが。やっぱり民衆からの評価も大事だよね。


「それは素晴らしい……では、任せよう。神楽」


「承知いたしました。必ずや生贄を求めるような邪悪な龍は倒してみせましょう……!」


 僕の言葉に神楽は力強く頷く。

 この一年間でだいぶ成長したお胸のたわわ……神楽の生育は順調なのに僕の生育はいまいちなんだよなぁ。下の方の生育はともかく身長が本当にひどい。


「じゃあ、依頼を受ける旨を村の人たちに伝えに行こうか」


「はい!そうしましょう!」

 

 僕と神楽は───辺境の地であることを良いことに本国より出されている命令を無視して圧政を強いていた君主が栄華を極めていた宮廷、既に血で染められた宮廷からこの宮廷がある街の外れにある村へと向かうのであった。

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