冒険者ギルド

 杷国には、というか世界には前世の世界にはいなかった魔物という生命体が存在する。

 魔術を発動させるのに必要な魔力の結晶体である魔石を体内に有する彼ら魔物は強力であり、いつの時代も人間の脅威であった。

 ここ最近は人類側の戦力があがっていることで以前のような勝てない相手ではなくなったが、それでも強いことには変わらない。

 

 そんな魔物の数は非常に多いためにすべてを軍で処理するわけにはいかず、民間の組織。九条家と同格の五貴族の一つである二条家の管轄である冒険者ギルドの所属する冒険者にある程度の間引きを任せているのだ。


「これはこれはよくぞお越しくださいました。九条様」

 

 そんな冒険者ギルドへと神楽と共にやってきた僕は入るや否やすぐに特別待遇として応接室へと通されて遜るギルドマスターと向かい合って座っていた。

 ギルドマスターは遜ってはいるものの、その本質は九条家と同格の二条家の者だ。

 五貴族間ではあまり対立はないが、それでも相性の良い悪いはある。

 

 九条家と二条家、民衆からの支持を広く集める両家はどちらかという相性は悪い寄りであり、その二条家の人間からは若干敵対心を感じる……別に当主同士も子供同士も仲は悪くないけど、家の性質柄勝手に下がいがみ合うことがよくあるんだよなぁ。統率を取るって難しい。


「本日は如何用で?」

 

 若干の敵対心を込めながら、だが遥かに立場の格が違うギルドマスターは僕へと全力で遜りながら口を開く。


「よく貴族の者たちも行うであろう?冒険者になること。それだ」


「おぉ!そうでございましたか。九条家の現当主が西洋に赴いて見せつけたという九条家の力。それを受け継ぎしご子息様の力量を見るのを楽しみにしています」


「期待しておくとよい」

 

 さらりと告げられる皮肉を受け流しながら僕に答える。

 にしても……父上、西洋で戦っちゃったのか?父上の戦い方ってば無茶苦茶だから割と海外で戦わないで欲しいんだけど、身内の恥。


「それでどうでしょうか。冒険者ギルドの制度をお聞きになりますか?」


「別にいらん」

 

 冒険者ギルドの制度はとても簡単だ。

 公的機関もしくは個人より当てられた依頼をギルドに登録している冒険者がこなしていく。

 そして、こなした依頼に応じてギルドより定められた冠位が上がっていくと言うものだ。冠位は下から薄黒、濃黒、薄白、濃白、薄黄、濃黄、薄赤、濃赤、薄青、濃青、薄紫、濃紫───要は推古朝に作られた冠位十二階の流用である。


「それで冠位は如何なさいますか?」


「一番下で構わん。どうせ上がる」


「承知いたしました。こちらが位階を示すマントとなっております。つけるなり保管するなりお好きなように」


「うむ」

 

 僕は二つのマントをギルドマスターより受け取る。

 基本的に冒険者の冠位として紫に至るものはおらず、青の時点で既にトップ層。赤であれば選ばれた上位層である。基本的に薄黄まで来たら中級者であり、濃黄辺りでもう誇れる。

 基本的のこのマントは冒険者であれば黄色辺りからつけるイメージだ。

 

 ちなみにデザイン性はめちゃくそ良いので黒や白の段階でも羽織っても普通にファッションとしてありだ。

 冒険者志望でもない者が冒険者ギルドに登録してマントだけもらうなんてことも普通に起きているし、それを提供している二条家の力が凄いものであるという民衆への誇示にもつながっている。


「行くぞ、神楽」


「はい、承知いたしました」

 

 僕の言葉に神楽が頷き、立ち上がった僕のすぐ後ろを陣取る。


「ではな。また会える日を楽しみにしている」


「いつでもお待ちしております。またの日を」


「うむ」

 

 僕は深々と頭を下げてくるギルドマスターの言葉に横柄に頷きながらこの場を後にするのだった。



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