勇者の力
「むぅ……こうして、こうするとぉ……俺にある術式に触れられるからぁ……これを使って、何をするんだ?そもそも俺の術式がいまいち何なのかわからない」
「……」
九条家の離れ屋敷。
その修練場でうんうんと悩みながら自身の術式について考える神楽を僕は茶を飲みながら静かに眺める。
既に神楽は男である自分が女物の着物を着ていることに何ら疑問を持つことがなくなり、その体つきも徐々に女らしくなって少し胸も大きくなりだした……待って?胸の成長早すぎないか?まだ僕も神楽も八歳だぞ?
女の子って発育が早いとは聞くけど、八歳の段階で大きくなり始めるのものなのだろうか……?後で紫苑辺りにでも聞いてみようかな。
それにしてもやっぱりこの見た目で下にちゃんと小さくはなっているけど息子あるのは神秘だよな。
神楽は完全に女へと変えるつもりではあるが、完全となる前に止めた男の娘は一部の層からの支持を受けて高値で売れそうだ。
「術式を使おうとしても光るだけ……それでもこの光を自分に重ねれば身体能力が上がるし、汚いところに当てるときれいになったりするんだよな。光るだけの術式とは思えないけど……」
かなり下衆めのことを考えている僕の前で神楽は至って真面目に
勇者である神楽の術式は強力だ。
しっかりと使いこなせれば神楽の力となれるだろうが……今のままでは無理そうだな。流石に魔術とは何かを軽く教えただけの神楽に任せるのはキツイか。
「神楽」
「はいっ!何でしょうか?蓮夜様!」
僕に名前を呼ばれた神楽がこちらの方へと慌てて向かってくる。
うーん。既に挙動も女の子らしい……常々言うけどこれでついているんだぜ?下の方は。凄いよな……マジで。
いくらでもツッコめる気がする。
「術式の理解、一人でやっていくのは難しそうだから一緒にやっていこうか」
「はい!お願いします!」
神楽の術式は『聖』。
その能力は聖なる力だ。人の敵を祓い、人を助けるというなんともまぁ、ざっくりとした力であり、ざっくりとした力であるゆえに何でもありな術式だ。
ゲームの神楽は光を無機物に纏わせて強化したり、味方を回復させたり、聖なる力を物質化して盾や剣を作っていたり、それはもう色々な手段を使っていた。
こんなとんでも能力を使いこなすのはかなりの高難易度だ。
これを使いこなすのであれば一から百を僕に教えてもらうのではなく、一から百を自分で理解していく方が良いだろう……いい感じに補助できるか否か、僕の頭脳が試されるな。
まぁ、僕であれば多分問題ないだろう。
「まず術式への解釈方法だけど……」
さも当然かのように僕の膝の上に乗っかった神楽の頭を撫でながら僕は魔術に関することを話すのだった。
■■■■■
聖剣と聖鎧。
それが神楽の勇者としての性能を最大限引き上げる宝具である。これを持っているといないのとではその戦闘能力にはかなりの差がある。
「……何も起きないですね?」
そんな聖剣と聖鎧をもって彼の術式である聖を注ぎ込んでも何の反応も示さない。やっぱり肉体が変容しつつある神楽を宝具は受け付けなかったか。
「やはり無理か……」
「な、何かダメだったです、か?」
「いや、そんなことはないよ……有用な実験データが取れた。君は良くやってくれている」
心配そうな表情を浮かべて狼狽している神楽に対して僕は優しく声をかける。
実際にここまでは想定通りだった……何も慌てることはない。むしろこうなってくれてありがたいほどだ。
「ふひひ」
神楽から聖剣と聖鎧を受け取った僕は笑みを漏らす……こいつらは使い物にならないゴミであることが判明した。ならどんな風に扱っても良いよね。一体どういう構造をしているのか、解剖の時が楽しみだ。
いそいそと空間を切り取って無理やり作った異空間へと僕は聖剣と聖鎧を仕舞う。
「……蓮夜様?」
「何でもないよ。さぁ、いつも通り魔術の訓練を始めていこうか。とはいっても模擬戦するだけだけどね」
僕も神楽も天才肌だ。戦っているだけで勝手にコツを掴める。
研究や勉強が無意味とまでは言わないが、こうして何も考えずに勘だけで戦っていた方が速いのだ。
勘でなんとなく掴んだものを研究して確固たる理論に変えればいいしな。
「胸を借りるつもりでいきます!」
「固有魔術は使わないから……遠慮なく来て良いよ。もう神楽がここに来て半年。半年の間に鍛え上げられた神楽の強さを遠慮なくぶつけてきていいよ」
聖によって強化される一振りの鉄剣を構える神楽に対して無手の僕が堂々たる態度で迎え撃つのであった。
ちなみに無手なのは舐めプじゃないよ?距離無限の刃を固有魔術で持つ僕は無手で戦うのがデフォなのである。
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