第14話 プランB

宿とそこの女将をお金の力で購入した僕は、地下に秘密研究所を作り、そこで様々な研究実験を繰り返す日々を過ごす。


僕が授かった力はかなり出鱈目な物であったが、しかし、更に出鱈目な力を持った者の噂話を耳にすることになった。


それは、大地を砕き、海を割り、天を焼き尽くすという。

その名も【勇者ジャスティス】。

そう、僕と一緒にクソ禿げに殺された地球人だ。


彼はクソ禿げに従順だった。

利用するために殺されたというのに、へらへらと媚び諂い上手い事、強大な力を手に入れたと思っているのだろう。


何故、強大な力にリスクが無いと思っているのか。

それとも理解して、その上で受け入れ使用しているのだろうか。


僕にはどうでもいい事だが、事を起こすに当たって脅威になるのは間違いない。

彼は確実にクソ禿げの犬で確定だ。

つまりは敵である。


テーブルの上には10センチメートル程度のロボットの模型が数体。

それぞれ姿形が異なっているのは、これらがビルドスーツの原形を試行錯誤しているからである。


今のところは卵に手足を付けたシンプルな物。

量産するに当たっては、とにかく作り易くしなければならないだろう。


だって、僕が手作りしないといけないんだもの。

複雑にしちゃったら、僕が死んじゃうよ。


「勇者ジャスティスか……どんなものか一度、確かめておきたいところだけど」

『危険かと』

「だよね」


彼は現在、魔王討伐の為に仲間たちと共に進軍中とのこと。

そう、彼はビデオゲームのように少数の仲間で魔王城に攻め込むのではなく、一万もの精鋭を率いて魔族の国を侵略しているのだ。

これは、どう考えても犯罪行為であろう。


勇者ジャスティスが所属する国家は【ウ・サン・クーサー】。

あのくそ禿げを唯一神として崇める宗教国家である。

つまりはロークデモ教の総本山。

僕とアル君の最終攻撃目標となる国家だ。


魔王との戦いで精鋭がどれだけ消耗するかは分からないけど、少なくともこっちも精鋭を一万程揃えなくては勝負にならないかもしれない。


というか、僕はお世辞にも戦いが強いとは言えない。

寧ろ、弱い方だ。


基本、高い基本性能で押し潰す戦いしかできないので、戦術などを使われれば、あっという間に不利な状況に追い込まれてしまうだろう。


だからこそ、数を揃えて集団で戦う必要がある。

僕の不足している能力をスライムたちに補ってもらうのだ。


というのが初期の構想。

正直、勇者がチート級の能力を保持していたら、この作戦は通用しない。

返って被害が大きくなるだけ、という結論に至った。


根本的に作戦を変更する必要が出てきたわけだ。


「というわけでプランBだよ」

『聞きましょう』

「全部ガン無視して、この星を脱出する」

『素晴らしく負け犬ですね』

「話は最後まで聞こうよ」

『続きがあると?』

「うん、星を脱出したら、星そのものを破壊するんだよ。これなら、例え勇者でもどうにもならない。人間は宇宙空間では生存できないからね」

『まさに外道』


そのためにも宇宙船が必要になる。

それも超巨大で、とんでもない破壊兵器を搭載した宇宙戦艦が。


いや、一つの世界を内封した【惑星脱出艦】かな。

この世界の命と土地を船に移植して自力で酸素を作り出せるようにしたい。

そのためには莫大な素材が必要になるだろう。


いや、初めは小型にして、この星を脱出してから、宇宙の資源を使って船を大きくしてゆくか。


うーん、初めての事だから手探りになるかな。


「いずれにしても、ここにはあと数年、ってところかな」

『秘密裏に船を作るのであれば、ここでは不都合でしょうね』

「うん。それに、船での作戦決行となれば、あまり親しい友人とかは作りたくない」

『ぶっちゃけ、皆殺し作戦ですからね』

「そう、それ。だから同時に、種の保存を兼ねて、【動物のつがい】とかも集めておかないと」


船の中に小さな世界を作るとなれば、動物たちを住まわせる必要がある。

そうすることによって循環が発生し小さな世界は上手く回るはずだ。


『取り敢えずは勇者ジャスティスがどうにかできそうなら、直接、神を叩く方針となるますね』

「まぁね。でも、あまり期待はしない方が良いかもね」


うん、ビルドスーツはこれで行こう。

どこからどう見ても【エ〇グマン】だけど、気にしない、気にしない。


これに申し訳程度のランドセルユニットを背負わせておけば、状況に合わせてオプションパーツの換装で高機動型、砲撃型にできて応用が利く。

これで十分だろう。


こだわりの機体はエースパイロットが出始めてからでも遅くはないし。


「取り敢えずは勇者ジャスティスの情報収集しないとね」

『勇者がいない内に攻め込むのもありかと思いますが……』

「それは僕も考えたよ。でも、圧倒的に戦力不足だし、そもそもビルドスーツも作ってないし」

『ですよね。では、同胞たちに勇者ジャスティスの情報を集めてもらいます』

「よろしくね」


時が過ぎるにつれて、僕たちの計画は変更となってゆく。

そして、世界も徐々におかしな方向へと舵が切られていった。

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