第6話 バトル、そして求婚

つばさは、狭い和室に連れて行かれた。

「暗くなったら隙をみて逃がしてあげるから、暫くは此処にいてくれる?」


野道が言うと、つばさは困った表情で「でも、縛られて転がされてたら私から、何かしら探りにいくとか出来ないじゃない?」と、至極当然な疑問を投げた。


「それは大丈夫じゃない?ほら、来た」


沙花凪さかなぎの足音が近付いて来て、つばさと野道の顔に緊張が走った。


「野道、ご苦労だったな」


沙花凪さかなぎが青白く、細くて長い指で、野道の頭を厭らしい手付きで撫で、其れから。


「お前は下がっていろ、三雪の面倒をみておいてくれ」


私は客人と話があるんだ、と、野道に三雪を押し付けた。


野道はつばさから離れられたら、誤解してるであろうよくと妹を人質にとられた可哀想な高津の戦いを止めに行くつもりだったので、三雪を預かって願ったり叶ったりだった。

早く2人の無駄な戦いを止めに行かなくては。


その間に、つばさ沙花凪さかなぎから上手い事情報を聞き出す事を願って。


「無事でいてくれよ、みんな……」


野道の思いを、知らない高津は。

溜息を吐いて、其れから。


「妹を人質に取られてる。意味分かるだろ?」とよくに言ってから猫耳を出し、高くジャンプして飛びかかった。


……ッ!」


高津の長い爪がよくの幼くて柔らかな頬を傷付けて、赤い血が滴った。

たまらず高く飛び上がって、距離をとりながらよくが言う。


「人質を取られてるのはこっちも一緒なんだけど?!」


つばさはまだ目覚めたばかりの、普通に暮らしてた女の子なんだ。

ぼくが護らなくては!ぼくが!は!!!



一方その頃、2人きりになったつばさ沙花凪さかなぎに顎を掴まれていた。


「……はい?今なんて?」

「何度も言わせるな」


沙花凪さかなぎがこほん、と咳払いして言う。


「私のと言っている」


カーカー…とつばさの脳内でカラスが三周した。

意味が分からない。

今私は、敵に求婚されているのだろうか?一体全体何故??


つばさがそんな事になっているとは知らないよくは、バサバサと虹色の羽根を飛ばして空中から攻撃するも、妹の命が掛かっている高津は強かった。

素早くジャンプして塀に登ったかと思うと、スルスルと電信柱に登り、ソコから飛び掛かって攻撃をしかける。


正義感の強いタイプのよくは高津に捕まえられて、抵抗して揉み合いながら、半ばムキになっていた、が。


殺す気は無い高津が、その首筋に噛み付いて、体格差でよくに勝った。


沙花凪さかなぎさんの所に行くぞ」


ひょいとお姫様抱っこされて、抵抗したくてもできなくて、よくたすくの名前を小さく、半ば無意識に呟いた。



都内の高級マンションで、若い2人は優雅にティータイムをしていた。が。


「……どうしたの?」


榛琳紗はしばみりんさがショートケーキを食べながら、たすくにきいた。

ガラステーブルに映った影が動きを止める、何故だろう、この感じは。

たすくはフォークで苺を刺すのを止めて、眉根を寄せた。


「何となく今、凄くがして……琳、よくの様子は?見える?」

「ちょっと待って……」


琳紗りんさが意識を集中すると、ボロボロになって担がれてるよくのビジョンが2人の間の空中に浮かんだ。


「大変!!癒してあげないと!」

「俺が行って来るよ」


たすくは言うと、上着を羽織った。


「気を付けて」


琳紗りんさが心配そうに、視線を向けて。

その表情が何だか切ないと思いながら、たすくは窓から文字通り飛んで行った。




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