第5話 村主翼、誘拐事件
危険なんて言われても、やっぱりまだ実感が湧かない。
青い空白い雲、平和そのもの。
羽根が生えた日以来、自分から羽根を生やした事は無かった。
まだ自分が普通の人間じゃ無いことが、あまり理解出来なかった。
鳥かぁ…
だからかな、無意識に青い空に救いを求めてた。
流れる雲に手を伸ばす。
まぶしい日差しを片手で避けながら。
何にも掴めない事、分かってはいるけど。
あの人みたいに、空を飛べるように、いつか自分もなるのかな…
でも、そんな事したら、狙われるのかな…
ぼんやりして瞳を閉じた。
「君が
頭上から声がしたので、目を開けるとそこには黒髪の少年が居た。
「…貴方は?」
「見た方が早いよね?」
野道はぴょこぴょこっと猫耳と尻尾を生やしてみせた。
「ぎゃ!敵?」
「
桜乃野道と言います、と言ってお辞儀した。因みに相方の高津は
「アイツからは話聞いてない?」
「何も…」
信じられない、と後ずさると、そりゃそうよね。と野道は呟いた。
野道はここに来た理由を説明した。
序に自分が
「おれに捕まったふりをして、一回こっちに潜入してみない?君の事は絶対逃がすし、もしかしたら事件の手掛かりが…おれなんかには話さないけど、あいつは鳥人間の君になら話すかも知れないし」
「そんな上手くいくかな?危険じゃない?」
「危険を冒さないと、何の情報も手に入らないと思うよ」
「それに多分、貴方も危険よね?」
「鋭いね、その通りだよ」
それとも、本当に本能が強いだけなのだろうか?
「良いわ。人助けだと思って捕まってあげる。あんたが味方だろうが敵だろうが、うちのセコムが飛んでくるだろうしね」
「…信じてるんだね」
「…そう言われたらそうね」
何にせよ今はここに居ないのがセコムとしては隙だらけだと思うけど、あたしは
「其れに、
鳥族が惨殺されなきゃならない理由は、ただの本能なのか、それとも?
横の猫耳の少年なんて、殺意の一つも感じられないし友好的な態度で、それこそ
大きな屋敷だった。猫族の本家は、和風の素敵な家に住んでいた。
徐に縄を取り出した野道は、羽根を出して、と
「一応戦ったっぽくしないといけないから…気絶したふりとかできる?」
「紐で縛るだけじゃダメなの?」
「お腹に猫パンチした感じにしたい」
「わかった」
手足の自由を奪われるように縛られて、野道が頼りない肩に気絶したふりをしている
「うわすご、本当に捕まえたんだ。俺はそこまでできんなぁ」
頑張るパッションがないんだよな。と高津はあくびした。
「よくやった。野道」
低い声がして、
「時に、高津。久しぶりにお前の妹が来ているぞ」
「…え?」
「私が呼んだ、暫く預かる事にしたよ」
言われた瞬間、高津の顔色に変化が起こり、赤くなってから青ざめた。
瞬時に分かってしまった。
こいつ、妹の
警戒心のない、まだ過去の事件の事を理解するには幼すぎる妹の頭を撫でて、それから厭らしく、首筋を撫でた。
やっぱり
「鳥を」
言われて
「このお姉ちゃん、きれい」
空中に現れた
「信用したぼくがバカだったよ!!」
ああ、ダメ、まだ潜入してない。助けに来るの早すぎなのよ!!
野道は表情を崩さなかった。
「私は三雪をみてるから、その血の気の多そうなちびっ子と、遊んでおやり、高津」
「じゃあ、ぼくは鳥を鳥かごにしまいますね」
自然な流れに見せかけて、
これからどうなるか、少し不安がよぎった。
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