第4話 『錬金術』スキルについて
「あっ‥‥‥すみません。話過ぎちゃいましたわ」
「えっと‥‥‥いっぱい作りたいものがあって良いね?」
いつの間にか30分近く作りたいものについて語っていたことにやっと気づいた私。
師匠はそのことに特に怒ってると言うわけではなく、なに言ってるのかわからないって感じに首をかしげてますわ。
「ごめんなさい! 師匠の話を続けてもらってもいいですか?」
「ん、それじゃあ今度は『錬金術』スキルについて。スキルを貰った時になんとなく使い方は分かると思うけど、アイリスはどれくらい理解できてる?」
確かに師匠の言う通り。この前スキルを授かってから、それを思い浮かべると使い方やできることがぼんやりと分かると思ってました。本当に感覚的なものですから、その感じがどんなものなのか説明するのは難しいですけれど。
それで『錬金術』スキルがどんな能力を持っているのか。私なりに文章でまとめるならこんな感じなりますわ。
『錬金術』
【錬成魔法】 魔力を用いて物質を変形・変換させたり、合成・加工・分解することができる。大事なのは完成形をイメージとして思い浮かべること。
【魔法付与】 発動したい事象の魔法陣を媒体に付与することで、魔力を流すだけで誰にでもその魔法を使えるようになる。
【素材鑑定】 素材に該当するもの解析することができる。
【等価交換】 自分の何かを差し出す代わりに、ランダムで何かを得る。なにを得るかは神のみぞ知る。
【錬金術全書】 錬金術の全てがそこに。いつでもどこでも閲覧することができる。
と、こんな感じですわね。
ところどころ曖昧なところがありますけれど、これ以上は使ってみないとわからないですわ。
「驚いた。もう充分なほど理解してる」
私が思ったことをそのまま伝えると師匠はそう言って褒めてくれました。本当に驚いてるかはやっぱり表情に出ないから分かりずらいですが。
「もう次の【錬金術全書】進めるけれど、一応何か聞いておきたいこととかある?」
ん~、なんでもかんでも教えてもらうより、自分で試行錯誤するのもいい好きですけれど‥‥‥。
「‥‥‥」(ふんふん)
師匠はどこか、とっても聞いてもらいたそうですわね。
「あ、それなら【魔法付与】と『付与魔法』スキルの違いってなんですの?」
「ん、アリシアは目の付け所が良い。関心関心」
また褒められましたわ!
「この二つは似てるようで非なるもの。具体的に言えば『付与魔法』の方が即効性、汎用性、魔力消費量などに優れてて普通の魔法のように使える。【魔法付与】はあくまで生産系のスキルの効果だからどうしても強い効果のある魔法は付与できなかったりして自由度が少ない」
「なるほど‥‥‥そもそも根本的なところが違うんですわね」
「ん。でも、やり方によっては【魔法付与】でも『付与魔法』と同じことができるし、『付与魔法』も『付与魔法』で魔法を使い捨てにしかできないっていう制限とかがある。どっちが有利っていうことはない」
「わかりましたわ!」
「あとなにか、ある?」
「いえ、あとは自分で考えますわ!」
「ん。わかった。なら次は【錬金術全書】について」
「はい!」
実は『錬金術』スキルの効果でこれが一番なんだかわかりませんでしたわ。なんとなくどういうものかは予想がつきますけど、はてさて。
「これは言わば錬金術の知の結晶みたいなもの。頭の中で念じると‥‥‥」
師匠が手のひらを上に向けた、その瞬間。
ちょうどその上に魔法陣のような文様が浮かび上がったと思ったら、大きな本が出現しました。
「こうやって本を召喚できる」
「す、すごい! 本当に魔法みたいですわ!」
「アリシアもできるよ。やってみて?」
そう言われて集中するために目を瞑った私は、両手を掲げて「本よ来い~本よ来い~」と念じてみます。すると。
「わっ、わぁっ! きましたわー!!」
次の瞬間、師匠の時と同じような魔法陣が浮かび上がって、手のひらの上に本が乗っていました。
「ん。上手くできたね。これが錬金術全書。この本には今まで生きてきた錬金術師たちの
「へぇ~、ということはこれって師匠と同じものなんですの?」
「それは違う。私の錬金術全書には、私が作った魔道具のレシピのメモとかが書いてある」
「うん? どういうことですの?」
「錬金術全書に載ってるのは今まで生きてきた錬金術師たちのレシピ。つまりもう生きていない。『錬金術』スキルを持っている人が死んだとき、初めてその人の成果がここに記載されることになるから」
なるほどですわ。なんでそうなるのかはわかりませんけど、師匠の言葉の意味は分かりましたわ。
師匠の言った通り、まさしく錬金術全書は錬金術の知の結晶なんですわね。
歴代の錬金術師たちはいったいどんなものを作り上げて来たのかしら? まさかもうガン〇ムを作ってる人がいたり!?
好奇心がムクムクと膨れてきて、我慢しきれず本を開いてみます。
「あれ? 師匠、私の本の中ほとんど白紙ですわ‥‥‥」
しかしパラパラパラとどこを開いてもまっさらなまんま。
まさか、不良品!?
そう思ったけれど、どうも違うようで。
「それはそう。錬金術全書は錬金術の手引書でもある。その人のレベルに合ったレシピまでしか開示されない。アイリスならまだ一番最初のページだけなはず」
「あ、ほんとですわ! えーっと、錬金釜とマナポーションとヒールポーションのレシピですわ」
「ん、その三つは誰でも最初から記載されてるもの。マナポーションとヒールポーションを作れば次のポーションか魔道具のレシピがいくつか書かれる」
「なんて便利な‥‥‥」
「手っ取り早く錬金術を極めたいならレシピを順番に作ってくことがおすすめ」
「師匠のはどれくらいできてるんですの?」
「ん~、だいたい七割くらい? 実は私もまだまだ。後半は難易度も高いしめんどくさい素材ばっかりだから、ここ300年くらいは新しい魔道具の開発しかしてなくてほとんど進めてない」
師匠でも七割なんて‥‥‥錬金術は相当奥が深いですわね。というか普通の人間に全部作ることなんてできるのでしょうか?
あと、さらっと師匠の年齢がすごいですわ。300年前ってこの国の建国時なのですけれど‥‥‥流石はハイエルフ。
「あ、ちなみにこの本、とても頑丈で破れないし燃えないから錬金術師にとって最強の武器になるよ。大きいからこれで殴ったり、ぶん投げたりすると鈍器として効果的」
そう言って錬金術大全をぶんぶんと振り回す師匠。
「‥‥‥‥‥‥」
なんだか急に知能指数が下がった気がするのは気のせいかしら‥‥‥。
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