第1話 前世の私と今世の家族

 私の名前はアリシア=フォン=サンライトですわ!


 神様から『錬金術』のスキルを賜った今日、どうやら前世の記憶ってやつを思い出したみたいですの。


 前世の記憶はまっこと不思議なことに、全然覚えなのない知識や思い出ですのにほとんど違和感なく受け入れられてますのよね。


 やっぱり違う世界でも私は私だからなのかしら?


 そしてその記憶によると、どうやら前世の私も職人の家系の生まれらしく、これまた今世と同じように年の離れた兄が二人いる末っ子だったみたいですわ。


 前世の父親は陶芸家兼ガラス細工職人。母は薬剤師をしつつ趣味で調香師。上の兄は家具職人兼彫刻家で、下の兄は電気工事士。更に祖父は刀鍛冶で祖母は一流の針子さん。


 その他にも親戚一同、彫金師やや屏風職人、大工やおもちゃ職人など多種多様なものづくりの仕事に従事していましたわ。


 そんな一族の一番末っ子だった私は、親戚一同からそれはもういたく可愛がられていて、色々な話や技術を教えてもらっていましたの。


 私自身にもものづくりの才能があったのか、教えられたことは何でもできました。自分の才能に惚れ惚れしちゃいますわ。


 しかし結局、私はどの職人にもならず、そんな職人たちの助けになるシステムを開発したいと思ってIoTシステムを活用したプログラムを開発するシステムエンジニアになったのですけど。


 それでもやっぱりものづくりの血には抗えなかったようで。趣味としてぷらもでる? という小型のゴーレムみたいのを作るのにドはまりしていたみたいですわ。


 その趣味が高じて、将来の目標は等身大版の本当に動かせるプラモデルを作ることでしたわ。


 そして前世の死因は、その等身大プラモデルに乗り込んで作動させた瞬間、システムエラーが起きて大爆発したこと。


 前世の私、クレイジーすぎますわ。でも最高ですわねっ! 爆発は職人の花道ロマンだって、誰の教えだったかしら?


 まぁ、そんなわけで前世の記憶が蘇った私とサンライト王国王女の私が混ざったことで、私はものづくり職人のはいぶりっと? みたいになったわけですわ!


 つまりなにが言いたいのかと言えば‥‥‥。


「お父様! さっそく錬金術を試していいかしら!?」


「まぁ、待て。まずは落ちついて、サマンサたちにも教えてやろう」


「ぬぅ~~っ」


 私はもう今すぐにでも何かを作りたいくらいものづくりに飢えているというのに! お父様のいけず!


 それでもお母様たち話さなきゃいけないってことも分かるので、ソワソワしながらもお城に入り、そのまま王家の居住区に向かいます。


 王城も、ものづくり国家であるこの国の最高の建築技術が使われているだけあって、芸術品として見てもとても美しい。


 今までは生まれてから当たり前のことでなんの感慨も湧きませんでしたけど、こうして前世の記憶を思い出した今となっては、初めて見るヨーロピアンなお城の中に興味が尽かないですわね。


 廊下に飾ってある壺や絵画といい次から次へと目に映るものが気になって、あっちにふらふらこっちにふらふら。


 そんな私を時折お父様が引っ張りながら家族の待つサロンの前までやって来ました。


 お父様と私が来たのを見つけて部屋の前に待機していたメイドさんがドアを開けてくれます。


 ふ~む、メイド服はクラシカルなロングスカートタイプですのね‥‥‥。前世の記憶にあるミニスカートのメイド服というのもありますし、こっちの方が可愛いから作っちゃおうかしら。


「あの、王女殿下‥‥‥? どうかされましたか‥‥‥?」


「あ、ごめんなさい。なんでもないですわ!」


 つい考え事をしてしまった頭を振って、急いで家族がいるサロンへ。


 中へ入ると、お母様に二人の兄上様たちの目が私へ向きました。


「お帰りなさい、アリシア。祝福の儀はどうだったかしら?」


 そう言って小首をかしげるのは、私の今世のお母様であるサマンサ=フォン=サンライト。


 私と同じ銀髪を腰まで伸ばしたロングヘアに碧眼の瞳。体型は小柄で、三人もの子供を産んだとはほど若々しさに満ちている。たぶん私の姉とかでも通用しそうですわ‥‥‥。


「はい、お母様! 錬金術のスキルを授かりましたわ!」


「まぁ‥‥‥」


「ほう? 錬金術だと?」


「へぇ、とても珍しいじゃないか! 魔法薬ポーション魔道具アーティファクトなんかも作れて、すごいスキルだよ!」


「あぁ、確かに。だがその分、使いこなすのは難しいんじゃなかったか? スキルを持っていても錬金術師になれる人はごく数人だって聞くぞ?」


 そんな風に話し合うのは長男の短髪で偉丈夫なアレクお兄さまと、次男でメガネをかけているカイルお兄さま。


 それぞれ18歳と16歳で私とはちょっと年が離れてますけど、そのおかげかいくらでもたくさん甘やかしてくれる優しい兄上たち。


「お兄さまたち! 私ならこのスキルを存分に扱えますわよ!」


「おお! そうだな! なんてったってアイリスは俺の妹だもんな!」


「うんうん、僕もアイリスが使えこなせるように手伝うよ」


 そう言って二人のお兄様たちは私の頭を撫でまわしてくれます。


 うへへ、お兄様たちに頭撫でられるのしゅき‥‥‥。


「はぁー、アレクもカイルもアイリスを甘やかすのは止めなさい。それであなた、どうするの?」


「アイリスは錬金術を使いたいみたいだし、本人の希望通りにさせてやりたいと思ってる」


「そう。なら、レティシアに頼みましょう」


「そうだな、この国一番の錬金術師だ。彼女ならアリシアの良い師匠になってくれるだろう。さっそく来てくれるよう手紙を書くか」


「アリシア、そういうことだからしばらくはスキルを使うのは我慢しなさい」


「はえ‥‥‥?」


 ごめんなさい、お兄様たちとじゃれあってて全然聞いてませんでしたわ。



___________


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