自作短編

銀月

深夜のたい焼き

冷たいたい焼きをかじる。


 冷蔵庫で規定の時間以上に時間をかけて、ゆっくりと自然解凍させた5個入り600円の冷凍たい焼き。


 冷蔵庫の中で近くにいたお漬物の匂いをほんのりとさせている、モソモソでパサパサな食感のたい焼き。


 決して不味くはないが、本来の食べ方であるレンジやオーブントースターで温めたものには及ばなかった。


 それでもまぁいっかと思いながら、ルイボスティーを飲みつつモグモグと食べ進めていく。


 食べた理由は3つある。①小腹がすいたから、②食後の運動をしたいから、③明日スーパーの定期宅配で同じものが届くから、の3つだ。


 あ、まだあった。理由③と若干被るが、冷凍室の霜のせいでスペースが狭いから冷蔵庫の整理をしたかったのと、何よりレンチンが面倒だったからだ。


 冷蔵庫の霜取りをしないとなぁ…いやそもそも霜が大きくならないようにちゃんと定期的にチェックしないと…あと定期宅配で注文するものも良く考えないと…なんて思考の枝葉を伸ばしている内にたい焼きを食べ終えた。


 ルイボスティーをひと口飲み、ホッとひと息ついたところで、食後の散歩…もとい運動のため、外へ出る準備を整えて、玄関へ向かおうとしたとき、ふと今何時か気になったので机の上を見る。


 机の上の時計の針は深夜11時を指していた。


 深夜の町をうろうろとぶらつ…ウォーキングする。上を見上げると星空だ。街頭やマンションの通路といった明かりがある住宅街でも、見ようと思えばちゃんと見れる。


 しばらく歩いて帰路につく途中にコンビニがあった。そういえばと、あることを思い出す。


 帰宅後、コンビニで買った1個150円の冷凍たい焼きを、今度はちゃんとレンチンする。


 手洗いとうがいと着替えを済ませて、レンジからアツアツのたい焼きを取り出して、パクっとひと口頬張る。


 美味しい。もちろん冷たい用のたい焼きは別だが、やっぱりこのタイプのたい焼きは温かい方が美味しい。


 少しだけそう感動しながら、温かいたい焼きをルイボスティーと共にハフハフ言いながら食べ進めていると、机の上の時計が目にはいる。


 机の上の時計の針は午前1時を過ぎていた。



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自作短編 銀月 @gingetsu243

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