第14話 目が覚めたら500年経ってました。あの勇者め。

「魔王様がぁぁぁぁ!!! お目覚めになられたぞぉぉぉぉぉぉ!!!」


 うぉぉぉぉぉ!!! という、けたたましい叫び声に一気に意識が浮上した。いやうるさいな、こいつら。


 と同時に、目覚めてすぐにこんなに喜ばれるなんて、と嬉しく思う自分もいる。悪い気はしない、我が子のような可愛い奴らにこんなに喜んでもらえるのは。勇者相手に奮闘した甲斐があった。


 勇者と剣を交え、核を傷つけられてしまったのは、未だ記憶に残っている。あとほんの少しずれていたら核を破壊されていたのだから、本当に危なかった。


 死んだふりをしてやり過ごし、というか、わざと部下に城を壊させて勇者一行を強制的に退出させた後、俺たち魔王軍は山の中に逃げこんだ。


 人間も、神も、信用できない。互いを信頼し合い、慈しみ合うのは魔物と魔族だけであると、いつから思っていただろうか。


 こんなに可愛い奴らを、痛めつけ、差別し、殺戮する人間と神を許さない。


 だが肝心のかしらである俺が核を傷つけられ、まともに動けない状態だった。


 だからまずは治療に専念するため、封印という形で眠らされていたのだ。


 核を治すために、最低100年はかかるらしい。つまり少なくとも100年もの間、こいつらは自分たちだけで頑張ってきてくれたのだ。感慨深い。


「魔王様、体調のほどは!?」

 

「ああ、大丈夫だ。ところで、あれから何年経ったんだ」


「は。500年と半年でございます」


「そうか、500年……」

 

 …………500……年……?


「おい待て待て待て。俺の傷はそんなに酷かったのか」


「は。あの勇者の剣が特殊な恩恵を受けていたそうで。治りが遅かったのだと思われます」


「…………」


 あんの生意気なクソガキめ!!! 俺を500年も寝かせやがって!!!

 

 が、500年もあれば流石の勇者も死んでいるだろう。神の恩恵を受けていようと、所詮はただの人間だ。かと言って、その末裔にわざわざ報復する気もない。


 ───どうせ俺たちの目的は、人間を全て抹消する事だ。末裔がいようといなかろうと、遅かれ早かれ、皆、死ぬのだから。


「魔王様。一つ、耳寄りな情報でございます」


「ほお、なんだ」


「四大神と、五つの神魂の生まれ変わりが、今生きているとのことです」


「……なに?」


「資料はこちらです」


 どこから集めてきたのか、すっ、と資料を差し出してきた。ご丁寧に似顔絵付きである。似顔絵というか、小さな肖像画。


 その肖像画越しでも、あの憎たらしい神々の生まれ変わりであると分かる。それぐらい、顔立ちや雰囲気が似ていた。


 ───その神の中で一人だけ、心から憎みきれない奴がいるということには、気づかないふりをした。


「魔王様。恐らくこの者たちは、この世界を元に戻そうとしております」


「……ほお」


「この世界が以前のようになるのは、魔王様、貴方が亡くなられた時です。このことは、我々魔王軍だけでなく、五つの神魂も知っています。つまり、あの者たちがこの場所を突き止めて、貴方と戦うのは時間の問題でございます」


「…………」


「魔王様。悪いことは言いません、どうかお逃げください。たとえ世界中の同胞が殺されようと、貴方さえ生きていれば、同胞はまた生まれ、そして生き永らえる」


「……面白い事を言うようになったな、お前も」

   

 昔馴染みの側近は、不安げな顔をする。ああ全くらしくない。年をとったんだな。そして、変わった。


「それでは俺たちが救われる世界は永遠に訪れない。───今こそが、機会だ」


 軋む体を無視して立ち上がる。従者が俺の体にローブをかけ、俺が左手を広げたら、側近は俺が愛用している剣を差し出した。


「今度こそ、神々を打ち破り、人間を根絶やしにして、我らの同胞だけの世界を作る」


 それこそが、俺の唯一の悲願であり、救いだ。

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